ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2012.01.10]

『曾根崎心中』から濃密な情感を紡ぎだした加賀谷香による『エゴイズム』

加賀谷香 演出・振付『エゴイズム』
加賀谷香 Dance SHAN

新国立劇場の「近松DANCE弐題」のもう1作、加賀谷香 演出・振付による『エゴイズム』は、加賀谷を主演として近藤良平、篠井英介、佐藤洋介、稲本雅寛、そしてヴァイオリン演奏の太田惠資が出演した。音楽が笠松泰洋で共同振付に柳本雅寛もクレジットされている。
近松門左衛門の人形浄瑠璃『曾根崎心中』をモティーフとして、加賀谷香がダンスを創った。<想いを貫くこと>を窮極の「エゴイズム」と捉え、加賀谷自身の舞踊観を投入して大胆に構成している。

tokyo1201d03.jpg 撮影:鹿摩隆司

上手舞台奥に廓のお初の小さな部屋が設えられている。初々しい18歳のお初から遊女となって燃えるような情熱をただよわし、ついには心中に至るまで、その部屋では様々な情景が変転していく。
始まりは、文楽の人形遣いの近藤良平と人形の加賀谷のデュオ。次第に閉じ込められた廓の女の息遣いと静かに燃え続ける密かなエロスの炎が描かれていく。そして徳兵衛や九兵衛とのからみのシーンが踊られ、有名な縁の下から絶望の死の覚悟を知らせるシーンもあり、心中は舞台奥の大きな迫りに二人が乗ってせりあがる。あの世で結ばれる心中の高貴な精神の高揚を表した印象的演出だった。
引き締まってバランスの良い加賀谷の身体表現が見事だった。男性ダンサーだけでなく俳優の篠井やミュージシャンの太田が舞台参加することにより、独特のニュアンスが出たことも興味深かったし、男性たちだけで踊るユーモアを感じさせるシーンもなかなかおもしろく見ることができた。
振り袖や緋色の長襦袢、黒の紋付の留袖(加賀谷家由来の着物だそうだ)などをドレスにアレンジした舞台衣裳も、大いに情感を高める効果を発揮していた。
近松の心中物の世界を大胆にモダンダンスの手法を駆使して濃密に表現して、見応えがある舞台だった。
(2011年11月25日 新国立劇場 小劇場)

tokyo1201d01.jpg 撮影:鹿摩隆司 tokyo1201d02.jpg 撮影:鹿摩隆司
tokyo1201d04.jpg 撮影:鹿摩隆司 tokyo1201d05.jpg 撮影:鹿摩隆司