MoN Takanawa開館記念プログラム バレエ『アレコ』プレス・ブリーフィングが開催された
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小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera

今年3月28日、TAKANAWA GATEWAY CITYに「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」がオープン。地上6階地下3階の建築空間にパフォーマンス・展示スペースを備えた文化の実験的ミュージアムで、寄席や歌舞伎など伝統芸能から漫画・アニメ、音楽まで多彩なプログラムの上演が予定されている。
バレエ『アレコ』は開館記念プログラム作品で、5月29日(金)の開幕を前に、プレス関係者を集めプレス・ブリーフィングが開催された。当日はMoN Takanawa アーティスティック・ディレクターの内田まほろ、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の諏訪翔一、演出振付の宝満直也が登壇し、施設とバレエ『アレコ』の概要を解説している。
バレエ『アレコ』の初演は1942年。レオニード・マシーンがバレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター)に振付け、マルク・シャガールが縦約9m×横約15mにわたる4枚の巨大背景画を描き、全4幕のバレエ作品として上演された。
現在シャガールが描いた4枚の背景画は青森県立美術館が所蔵し、美術作品として「アレコホール」に常設展示され、同館の目玉の一つとなっている。この「アレコホール」を会場に、青森県立美術館が宝満を演出振付に招き、2024年11月、バレエ『アレコ』を上演。早々にチケットがソールド・アウトを果たすなど、大きな反響を集めた。このたびのMoN Takanawaでの再演は、会場に合わせて人数編成を増やし、新たな演出振付構成を加えての上演となる。



レオニード・マシーンの振付作『アレコ』とはまた違い、青森の初演では宝満がいちからオリジナルで演出振付を手がけたという。宝満がその経緯を語った。
「青森の初演にあたり、まずレオニード・マシーンの『アレコ』のオリジナル映像を音楽がない状態で見ています。ただそれは全く意識せず、チャイコフスキーの音楽を聴き、構成から考えなおし、自分なりに全く新しく作りなおしました。ストーリーはプーシキンの詩から取りましたが、詩だと細かい描写がなく、全体の流れは変えずに詩をふくらませています。衣裳は当初デザイン画を再現しようとしましたが許可がなかなかおりず、デザイン画の色味を参考に新しく作りました」

MoN Takanawa アーティスティック・ディレクター 内田まほろ

演出家 宝満直也
青森県立美術館での初演時は、シャガールの背景絵の前に特設ステージを組み、客席を設置。四方を絵に囲まれた状態で上演している。
「シャガールの『アレコ』は、それを観に青森県立美術館に足を運ぶ方がいるくらい、絵として魅力的で完成されている。絵の邪魔にならない演出にする、ということにとてもこだわりました。とはいえ絵の存在感に遠慮することなく、絵だけでは見えなかったものがバレエと混ざることで見えてきたり、チャイコフスキーの音楽に踊りが混ざることで聴こえなかった音が聴こえてきたりするかもしれない。踊りもまたしかりで、音楽と合わさることで見えるようになる関係性だったり、エネルギーみたいなものを最終的に見られたら、という想いで臨んでいます」
今回の再演では、MoN Takanawaの会場Box1000に、青森県立美術館が所蔵するシャガールの4枚の背景画をキヤノンの高精細LED技術により投影。幕ごとにLEDで4枚の背景を変化させ、シャガールが想定していた本来の目的通り、物語と絵の一体感でみせる趣向だ。
「LEDの絵を見るのと、実際に飾られている絵を見るのではまた違う。実際にシャガールの『アレコ』を見ていると、空間を含め、表面の質感だったり、聞こえてくる音とか、全てが体験としてある。けれど今回はLEDで映像になるぶん鮮明で、まるで映画を観るように、ダイレクトに情報が入ってくる。そこに負けないように、いいバランスで、お互い相殺しないようにしなければいけない。いずれにせよ、絵が十分に役割を果たしているので、余計なことをしないで、かつストーリーが入ってくるよう心がけています」

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 諏訪翔一からLEDについて解説された

左から、内田まほろ、諏訪翔一、新井悠汰、勅使河原綾乃、宝満直也
物語の原作は、ロシアの文豪アレクサンドル・プーシキンの詩『ジプシー』。ロシア貴族の青年アレコはロマ(ジプシー)の娘ゼンフィラと恋に落ちるが、自由奔放なゼンフィラはロマの若者に心を移し、アレコは嫉妬のあまりゼンフィラと若者を殺めてしまいーー。
プレス・ブリーフィングでは、作品の一部を公開リハーサル形式で紹介。ゼンフィラ役でNBAバレエ団プリンシパルの勅使河原綾乃と、ロマの若者役でNBAバレエ団プリンシパルの新井悠汰が登場し、ゼンフィラとロマが惹かれ合うシーンが実演された。
勅使河原は初演で同役を踊ったオリジナルキャストで、新井は今回初役となる。実演されたのは、テクニックの要されるリフトが多く、そのなかで感情を表現してみせる難しいシーンだ。
「彼女のことをはっきり目で見て。彼女のことをどの角度からでもずっと見て、もっと受け入れて。キャッチするときに目を見合いたい。2人だけに見えている世界が前に広がってくる、それをお客さんに見せている感じで」と、宝満から2人へ細かい指示が続く。

宝満直也、新井悠汰、勅使河原綾乃

新井悠汰、勅使河原綾乃による実演
主要キャラクターはWキャストで、ゼンフィラ役は勅使河原とNBAバレエ団プリンシパルの山田佳歩、ロマの若者役は新井とNBAバレエ団ファーストソリストの北爪弘史が回がわりで出演。主演のアレコ役は、初演キャストで牧阿佐美バレヱ団プリンシパルの大川航矢に加え、ハンブルク・バレエ団客員プリンシパルのアレクサンドル・トルーシュをゲストアーティストに招く。
「大川さんはロシアでずっと踊ってきて、すごいテクニックで人を魅了してしまう素晴らしいダンサー。オリジナルキャストなので、彼のために振付を作り、彼が役に飛び込んで初演を演じてくださった。トルーシュさんは人物造形が深いジョン・ノイマイヤーのもとでずっと踊ってきた方なので、彼がアレコをどういう風に踊ってくださるのかすごく楽しみ。本番の2週間くらい前に来日し、クリエーションを始めています。2人とも全然持ち味が違うので、トルーシュさんにはトルーシュさん用に振りを作り直すつもりです」
青森での初演から2年ぶりに再演を迎えるバレエ『アレコ』。宝満自身、その間に文化庁新進芸術家海外研修性として9ヶ月間ドイツ・ベルリンで研修し、昨年帰国したばかり。ドイツでの経験が作品にもたらすものとは。
「ベルリンに行っていろいろな劇場を見てまわりましたが、老若男女地元の人たちが集まって、作品を観た後にずっとああだったよねと話してる。その姿を見て、劇場が地域に根付いているのを感じました。楽しむだけに作品を観るのではなく、思考や問いの始まりになっていると感じた。それを『アレコ』に置きかえたとき、演出でできるのは、人物造形をしっかり描くこと。そこにとことんこだわることで、登場人物のクセや匂いが観ていただく方々に何かひっかかったり、共感したり、思考のきっかけになるような舞台になったらと思っています」
バレエ『アレコ』は2026年5月29日(金)~2026年6月7日(日)まで、MoN Takanawa Box1000で上演。
https://montakanawa.jp/programs/aleko/

関連企画として、ベルナルド磁器のマルク・シャガール コレクションを展示


アレコ役のアレクサンドル・トルーシュ

ゼンフィラ役の山田佳歩

アレコ役の大川航矢

ゼンフィラ役の勅使河原綾乃
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