伝説のバレエ漫画を舞台化!『SWAN -Ballet cross Reading-』主人公 真澄役・飯島望未インタビュー
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小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera

1976年に連載をスタートし、シリーズ累計発行部数2200万部の大ベストセラーを誇る有吉京子作「SWAN-白鳥-」。バレエ漫画の金字塔といわれる名作が、連載開始50年を迎えた今年、『SWAN -Ballet cross Reading-』として初の舞台化を果たす。
脚本・演出は、近作に『レッドブック ~私は私を語るひと~ 』(演出・上演台本・訳詞)、EXPO2025『いのち、ありがとう』(構成・演出)、『王様と私』(演出・翻訳・訳詞)など数々の話題作を手がける小林香が、バレエ監修・振付は、新国立劇場バレエ団を経て現在はフリーのダンサー・振付家として活躍する福田圭吾が担当。
ダンサーはトリプルまたはダブルキャストで、秋元康臣、厚地康雄、飯島望未、今井智也(谷桃子バレエ団)、菊地研、木村優里(新国立劇場バレエ団)、塩谷綾菜(スターダンサーズ・バレエ団)、柴山紗帆(新国立劇場バレエ団)、関野海斗、中島瑞生(新国立劇場バレエ団)、中野伶美、成田紗弥、宮内浩之、山田夏生、米沢唯(新国立劇場バレエ団)、渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団)に、倉永美沙(サンフランシスコ・バレエ団)、佐久間奈緒、中村祥子ら、国内外で活躍する豪華キャストがずらり集結。またリーディングキャストは、井桁弘恵、村川絵梨、東啓介、西野遼、福士誠治が出演し、バレエダンサーのダンスと役者のリーディングが交錯する、新感覚のステージを創り上げていく。
今年9月の開幕に先駆け、主人公・真澄役(トリプルキャスト)で出演する飯島望未にインタビュー。本作へ臨む心境と、彼女の今を聞いた。
――漫画の世界をダンスとリーディングで描く『SWAN-Ballet cross Reading-』に真澄役で出演されます。オファーがきたときの心境をお聞かせください。

飯島 振付の福田圭吾さんからお話をいただきました。真澄役をと言われ、最初は私でいいのかな、という心境でしたね。何より、有吉先生の描く漫画の世界観を生身の人間がどうやって表現するのだろう、という疑問がまず浮かびました。漫画をリアルに演じるのってすごくハードルが高いだろうし、しかも役者さんのリーディングと共に踊るということで、私たちもまだまだ探り探りという状態です。
福田さんと舞台でご一緒するのも、福田さんの振付を踊るのも初めてです。ただ同じ大阪出身ということもあり、彼のことはずいぶん前から知っていました。というのも、福田さんは地元大阪のバレエ界では昔から有名人だったので。バレエ界は狭く、いつしか自然と知り合っていた感じです。
台本には漫画の吹き出しにあたるセリフが書いてあって、その感情にのせながら踊ります。クラシック一辺倒ではなく、いろいろな表現でみせていく感じでしょうか。もちろん私たちダンサーは喋ることは一切ありません。ただ踊りとリーディングが個々にわかれてしまうと違和感が生まれるので、両方が一体化できればと思っていて。踊りとリーディングが自然に見えるような、本当に漫画を読んでいるようなステージになるのが理想です。
――真澄役はトリプルキャストで、回がわりの出演となります。
飯島 トリプルキャストではあるけれど、3人ともタイプが全然違う。三者三様の真澄像があるだろうし、それぞれの真澄が見えたらいいのかなと思っています。コンテンポラリー的な動きで日常を描くので、そこでの表現の仕方の違い、踊りの違いも見えてきそうです。
真澄役のリーディングキャストを務める井桁弘恵さんともお会いましたが、すごく可愛い方でした。女優さんとバレエダンサーでは全然違う職業だけど、やっぱり表現するという意味では共通するものがあって。女優さんは表情や声色で表現し、私たちは身体表現と、通ずるものは何かしらあるんじゃないかと思っています。あと井桁さん自身も以前バレエをされていたということで、共感しあえるところがあるかもしれないですね。
――本公演では、原作漫画「SWAN-白鳥-」から序盤のストーリーをピックアップし舞台化。北海道の小さなバレエスタジオに通う少女・聖真澄がバレエの才能を見出され、悩みながらも成長していく姿が描かれます。改めて「SWAN-白鳥-」を読み返して、どんな印象を持ちましたか。
飯島 時代背景もあるのでしょうけど、みんな大人ですよね。京極さんなんて高校生なのにすごく達観しているし。あとみんなストイックで、「先生が来るまでパ・ド・ドゥしようぜ!」なんて言ったりしてる。「パ・ド・ドゥしようぜ」なんて言われたことも言ったこともないな、なんて思いながら読んでました(笑)。真澄や京極さんもそうだけど、リリアナみたいな天才少女が果たしてリアルにいるのか。そういうのはやはり漫画の世界でしか描かれない部分で、そういう世界だからこそ憧れる要素がいっぱいあるのだと思います。漫画を通して、自分もその主人公になれる。バレエをやっている人はもちろん、バレエを知らない人が読んでも憧れる。バレリーナへの憧れが全部詰まった物語だなと改めて感じました。

『SWANー白鳥-愛蔵版』第1巻(有吉京子著・平凡社刊)

『SWANー白鳥ー愛蔵版』第1巻(平凡社刊)より
© 有吉京子/平凡社
――真澄と同じ年頃のころ、飯島さんはどのような日々を過ごしていましたか。
飯島 中学を卒業してすぐにアメリカへ行きました。もうめちゃくちゃガムシャラでしたね。私がアメリカで出会ったバレエダンサーは、みんなすごく個性が強い人ばかり。私はそれまでテクニックをいかに磨くか、コンクールでいかに完璧に踊るか、という練習しかしてこなかったので、みんなが自分の長所を全面にアピールしているのにすごく驚きました。演技に対しても羞恥心なく表現していて、それが羨ましかったですね。私自身は演技にすごく苦手意識があったし、あと身体的な悩みもあったりと、いろいろコンプレックスがありました。みんなスタイルがいいから、自分と比べて落ち込むことの方が多くて。日本にいる時より必死でした。追いつけ、追い抜こう、という精神で日々過ごしていたと思います。
――ガムシャラな日々が実を結び、16歳のとき史上最年少でヒューストン・バレエ団に入団。着実にキャリアを重ね、プリンシパルとして活躍されています。
飯島 運が良かったと思います。あと私は物怖じしないタイプなので、それも良かったのかもしれません。ディレクターに「君は日本人っぽくないね」と言われて、「どういう意味?」と聞いたら、「態度がでかい」と言われてしまいました(笑)。でも、それが逆にいいんだとも言われました。自信がないのに、自信があるように見えた。自信がないと、やっぱりうまく見えないからと。「面白い子だね」とも言われました。それはいい意味か悪い意味かわからないけれど(笑)。
――2021年にK-BALLET TOKYOに移籍。プリンシパルとして数々のレパートリーで主演を務めてきましたが、ご出産をきっかけに昨年退団されました。
飯島 全幕の最後は『白鳥の湖』でした。あのときはお腹に赤ちゃんがいたので、夫(K-BALLET TOKYOプリンシパル山本雅也)と親子3人で共演した感じです(笑)。子どものことは周りの誰にもいわず、公式発表でみんなが知った形でした。『白鳥の湖』を出産前の最後の舞台にするつもりでしたが、熊川哲也ディレクターと相談して、その後ガラに出演しています。
K-BALLET TOKYOを退団したのは、バレエと子育ての両立の難しさがありました。子どもと少しでも長く一緒に過ごせる方法はやっぱりフリーランスになることだろうと、自分の中で思っての決断でした。
――産休を経て、いよいよ本格舞台復帰を迎えます。
飯島 稽古復帰は出産後2ヶ月のころでした。1ヶ月検診の時にお医者さんから「運動していいよ」と言われ、そこから徐々に始めています。最初は赤ちゃんを抱えながらバーレッスンをしていましたね。今は家で稽古をしたり、オープンクラスに行ったり。子どもを保育園に入れたので、やっと外でクラスができるようになりました。
ただ体型が全然戻らなくて、今頑張っています。結構大変なお産だったので、なおさらみたい。腹筋など筋力もそうですけど、股関節もまだ痛みがあって、いろいろ調整中ではあります。
舞台復帰に関してはあまりそこまで深く考えていなかったけれど、ありがたいことにみなさんからオファーをたくさんいただき、お引き受けしているところです。まず7月に韓国で開催されるガラ公演に出て、同じく7月に「Bright Step 2026」、「POLA presents BALLET TheNewClassic 2026」、8月は「SHIVERバレエコンサート2026」と、「Alexandrite Gala 2026」でイワン・ワシリーフさんとグラン・パ・ド・ドゥを踊ります。日本バレエ協会の公演にも出演します。ちょっと詰め込みすぎちゃいました(笑)。舞台に立っている自分を想像して怖くなったり、すごくドキドキもするけれど、ワクワクももちろんあるし、早く踊りたいと思う気持ちもあります。

――お母さんになって、何か変化はありましたか。
飯島 壮大な変化はないけれど、いろいろ自分の気持ちに余裕が出た気はします。もともと全て完璧にしたいというタイプでしたが、いい意味で諦められるようになったというか、変わらないものは変わらないと思えるようになりました。
子どものことも、バレエのこともそう。なかなか身体が戻らなかったりもするけれど、変にもがかなくなったというか。実は結構ネガティブなので、以前の私だったら、どうしようどうしようと焦って、追い詰められていたと思うんです。でも今は、今できること、今のベストがこれだからしょうがない、時間をかけながらやるしかない、と思えるようになりました。だからこそのフリーランスだと思うし、そんなに焦ってはないですね。舞台に立ち始めたら、また心境の変化があるのかもしれないけれど。
フリーランスとしてやっていくにあたって、その厳しさや難しさももちろんあるし、そこを自分が甘く考えているわけではなくて。ただ自分のペースで、自分にしかできない働き方があると思っています。
――ご夫婦共にトップダンサーですが、ゆくゆくはお子さんにバレエダンサーになってほしいという想いはあるのでしょうか。
飯島 バレエをさせるとは思うけど、遊び程度にやらせようかなという感じです。本格的にやりたいと本人が言えば、どこか教室に入れるかもしれません。自分では教えたくないですね(笑)。ほかで習う方が絶対にいいと思うので。
夫はものすごいイクメンで、ものすごい子煩悩。バレエ団が早く終わった日はすぐに帰ってきて子守りをしてくれたり、私が復帰に向けて万全な態勢で臨めるようにサポートしてくれていて、すごく感謝しています。
――フリーランスになって、また新たなスタートです。
飯島 これまではK-BALLET TOKYOで熊川作品に出演し、熊川ディレクターの魂や想いを誠実に踊ってきたつもりです。だけどフリーランスの場合、今まで関わってきたことのない方々ともお仕事をさせていただくことになる。舞台にかける想いはみなさんそれぞれで、そこに誠実に向き合っていくつもりです。例えば日本バレエ協会の舞台であれば、今まで活躍してこられた先生方の伝統や歴史もあるので、それを重んじながら踊っていきたいと考えています。
子育てをしながらになるけれど、フリーランスだからといってクラスを怠たるようなことのないように、できることは精一杯やって、舞台に臨んでいきたいと思います。
――最後に、舞台をご覧になる方にメッセージをお願いします。
飯島 漫画「SWAN-白鳥-」には根強いファンが多いので、その世界観を崩したらいけないという気持ちがまずあります。漫画のファンの方々は、楽しみ反面、ちょっとジャッジメンタルな感覚もあると思うから。演出の小林さんやバレエ監修・振付の福田さんの作る世界を私たちが等身大で表現し、それをリーディングとともに楽しんでいただけたらいいですね。バレエを観たことない方もきっと楽しめる作品だと思うので、幅広い方に観に来ていただけたらうれしいです。
『SWAN -Ballet cross Reading-』
2026年9月4日~9日
新国立劇場 中劇場
https://swan-balletcrossreading.com/
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