和の情緒とバレエの機能美の融合を目指した針山愛美の『鶴の恩返し』が伊東市で上演された

ワールドレポート/東京

関口 紘一 Text by Koichi Sekiguchi

針山愛美プロデュース公演「One heart」

『鶴の恩返し』ほか 針山愛美:演出・構成・振付

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「白鳥の湖」photo/T.oshida

針山愛美は戦地となったウクライナから避難せざるを得なかったバレエダンサーたちを受け入れ、バレエが踊り続けられる環境を作り、淡路ワールド・バレエを設立し、芸術監督を務めている。現在、淡路ワールド・バレエはウクライナのダンサー、指導者、日本のダンサーなど16名で活動している。2024年には、日本のバレエ団として初めてラトビア国立劇場で公演を実現した。翌25年には大阪・関西万博のオープニングイベントに出演するなど国内外で積極的に公演を行っている。
そして2021年には静岡県伊東市で公演し、ウラジーミル・マラーホフを招聘し、中村恩恵が振付けた『アルテア~源氏物語より~』を上演し、マラーホフ、針山愛美、中村恩恵、宝満直也が踊った。そして『瀕死の白鳥』を女性ダンサー(針山愛美)と男性ダンサー(マラーホフ)が、同時進行で踊る、といった創意を凝らした舞台を作って話題となった。
今年3月15日、針山愛美プロデュース公演「One heart」が伊東市に帰ってきたのである。伊東市はもちろん、豊富な湧出量を誇る温泉の街としても有名だが、多くのアーティストや文化人が保養に訪れたり、別荘を構えたりしており、前回の公演も満員となったばかりでなく、街の人々が公演開催に熱心に協力していた。地方都市でバレエ公演が開催されることは稀であり、市民も誇りを感じているようであった。

今回公演では、まず、伊東市の新市長杉本憲也氏の「今後も機会があればこうした公演を開催したい」という挨拶の言葉から公演の幕が開いた。
プログラムは2部構成で、まず、チャイコフスキー音楽の『白鳥の湖』とミンクス音楽の『ドン・キホーテ』の名場面集。『白鳥の湖』ではオデットとジークフリート王子の愛とその運命を踊り、黒鳥のパ・ド・ドゥも披露された。『ドン・キホーテ』では華やかなでダイナミックなスペイン舞踊を織り込んだバレエの楽しさを見せた。
続いてウクライナの」民族舞踊『ゴパック』。ウクライナの大地を表す広大はひまわり畑に咲き乱れる花々の圧倒的な映像を背景に、男性ダンサーの豪快なジャンプが次々と展開。さらに軽快でアクロバティックなコサックダンスも披露されて会場は喝采に包まれた。

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「ゴパック」photo/T.oshida

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「白鳥の湖」photo/T.oshida

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「ドン・キホーテ」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

続いてバレエ『鶴の恩返し』。針山愛美は、特にウクライナのダンサーたちとパフォーマンスを行うようになってから、「和」の美しさやその様式とクラシック・バレエの融合を試みるようになっている。そのひとつとして日本の民話を題材としたバレエ『鶴の恩返し』を創作したのである。
物語は、心優しい若者、一期(いちご)と傷ついた鶴、一会(いちえ)の出会いと別れを描くもの。幻の湖で傷ついた鶴を助けた一期は、その帰り道に大怪我をする。一会は自分の羽を抜いて邪悪を祓う特別な織物を織って一期を助けることを決意した。ただし「私が織物を織っているところだけは決して見てはいけない」と伝える。ところが・・・。
一会は針山愛美、一期は倉智太朗(PASONA Awaji World Ballt)が踊った。針山は衣裳も手がけているが、和の情緒とバレエの機能美を融合を目指した、という。鶴の化身を思わせる純白の衣装は、まさに和の情緒をとり入れた美しさが自然に表れており、針山愛美の素晴らしいスタイルを一段と輝かしていた。また、背景に映像を多用していたが、映像のライトとダンサーの衣裳が煌めき合って、神秘的な雰囲気が舞台上に醸し出されていた。
日本の民話を題材としているので、物語もわかりやすく、針山愛美がこのパフォーマンスに込めた平和への願いのメッセージが観客の心にも届いたに違いない、と思う。

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

針山愛美は近年、バレエの普及のために社会活動など多方面にわたる活動を展開しており、バレエへの献身ぶりには、本当に頭が下がる想いである。そのほんの一端を記しておこう。
今回公演が行われた伊東市では、4校の中学校を訪問し、ワークショップや講習会、生徒たちの目前で『瀕死の白鳥』を踊るなどのアウトリーチ活動を行なった。同様の活動は、本拠地を置く淡路島の各地、西宮市などの学校でも行なっているし、老人ホーム、保育園でもアウトリーチ活動を行なっている。また、日本癌学会、早稲田大学、明治大学、学習院大学、ロータリー・クラブなどでもレクチャーを行なっている。
2025年大阪・関西万博のシャインハット、清水寺、瑞龍寺(富山県高岡市)などでもパフォーマンスを行なったほか、ベルリン国立バレエ学校への短期留学などの若手育成プロジェクトも手がけている。そのほかにもギャラリーや博物館などでも即興のコラボレーションを行うなど多彩な活動ぶりには枚挙にいとまがない。詳しくはhttps://www.chacott-jp.com/news/column/berlin/をご覧いただきたい。
(2026年3月15日 伊東市観光会館)

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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「鶴の恩返し」photo/T.oshida

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