パリ・オペラ座ガルニエ宮で純国産作品『かぐや姫』を上演する東京バレエ団、イタリア&フランス公演 記者会見リポート

ワールドレポート/東京

小野寺 悦子 Text by Etsuko Onodera

東京バレエ団が、第37次海外公演(イタリア)、第38次海外公演(フランス)の実施を発表。公演に先駆け記者会見が開催された。

第37次イタリア、第38次フランス公演共に、金森穣演出・振付作『かぐや姫』を上演。東京バレエ団が全幕オリジナル作品を海外で上演するのは、『ザ・カブキ』(1986年初演)、『M』(1993年初演)に続き3作目となる。第38次海外公演(フランス)の期間は2027年5月26日(水)~5月29日(土)。会場はパリ(パリ・オペラ座ガルニエ宮)他で、計110名が参加見込みという大規模ツアーを予定している。
(第37次イタリア公演は劇場側のシーズン・ラインナップ情報解禁前のため5月初旬の詳細発表を予定)

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© Yuji Namba

記者発表当日は、金森穣(演出振付家)、斎藤友佳理(東京バレエ団団長)、秋山瑛(東京バレエ団プリンシパル)、大塚卓(東京バレエ団ファーストソリスト)、髙橋典夫(公益財団法人日本舞台芸術振興会 専務理事)が登壇し、会見に臨んだ。

まずは髙橋が財団を代表してスピーチ。海外公演にかける想いを述べた。
「東京バレエ団創立以来62年間の間に33ヵ国158都市で799公演を行い、イタリア公演初日でちょうど海外公演通算800回になります。いずれも自主公演ではなく、全て先方から招待を受けての公演でした。
東京バレエ団はこれまで過去3回オペラ座に呼ばれていて、モーリス・ベジャールの『ザ・カブキ』が2回と『M』、そして今回が4回目。正真正銘の純国産作品というのは今回が初めてです。
東京バレエ団の創業者・佐々木忠次が、海外公演をするたびに「どうして日本人振付家の作品がないんだ」と現地の人たちから言われていたそうです。我々もそれは佐々木から引き継いだ夢だと思い、なんとか実現できないかと長い間思っていました。ずっと目標にしていたものが、ようやく実現すると考えると、ちょっと感慨深いのものがあります」

『かぐや姫』は東京バレエ団がNoism Company Niigata芸術総監督の金森穣に委嘱し創作された作品で、2021年11月に1幕を、2023年4月に2幕を、2023年10月に東京文化会館で全幕世界初演を迎えている。
「日本にバレエが入ってきておよそ100年。今世界各地のバレエ団で日本人が活躍しているけれど、振付家が足りない。今回私自身がこういう機会に恵まれましたが、これは遅かれ早かれ誰かがやるべきことだったと思いますし、そういうタイミングだったのだと思います。自身のことに引き寄せて言えば、2004年にこの国に初めて公立劇場の専属舞踊団を作ったのも私でしたが、私自身にそういう運命、巡り合わせが来た。その中で精一杯、自らの献身によって、その縁に報いる形で闘い続けてきた。それが私の舞踊家人生そのものであり、今回こうして日本人として初めてパリ・オペラ座で東京バレエ団と共に創ったオリジナルの、日本のバレエが欧州の方たちに観ていただけるのはうれしく思いますし、この1年が待ちきれない心境でいっぱいです。ようやく日本のバレエもここまで来た、ここからなんだと思う。借り物としてのバレエではなく、日本のバレエとして、日本の舞台芸術として、国際的に発信していく時代が来る。その一助となれば幸いです」と金森。

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斎藤友佳理(東京バレエ団団長)© Yuji Namba

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金森穣(演出振付家)© Yuji Namba

東京バレエ団がオペラ座で公演を行うのは2012年の『ザ・カブキ』以来15年ぶりとなり、斎藤にとってガルニエ宮での上演は大きな念願だったと話す。
「『かぐや姫』の構想が始まったのは2017年で、私が芸術監督に就任してから2年後のことでした。穣さんとどんな作品がいいだろうと話し、ようやく実現したのが2021年。初演までに長い時間がかかっています。
『かぐや姫』という日本最古の物語でいきたい、作曲家はドビュッシーでいきたいと穣さんが言われてから、いつかこの作品をもってパリに行きたい、オペラ座にいきたい、それもバスティーユではなくガルニエ宮で、という強い想いがずっと私の中にありました。カルニエ宮が改修工事に入ってしまうと聞き、自分がバレエ界で仕事をしているうちに公演をするのは無理だろうと諦めていましたが、その矢先にオペラ座から招待を受けることができました。オペラ座のガルニエ宮で公演ができるというこの機会は、ダンサーたちにとっても、東京バレエ団にとっても、それから日本のバレエ界にとっても、大きな大きな進歩になると思います」

秋山はかぐや姫役の初演キャストで、この5月に控えた東京文化会館での再演では、海外公演に先駆け再びかぐや姫を踊る。
「東京バレエ団で穣さんが新作を創るとき、まずトライアウトでオーディションがありました。そして1幕、2幕、全幕があり、イタリア・ツアーへ行き、そしてオペラ座で公演をする。なんだか現実味がないですね(笑)。オペラ座というのはすごく伝統的な劇場であり、バレエをやっている人にとって憧れの舞台だと思います。この作品に携わることができたのは、私にとって光栄で、幸せなことだと思っています」と秋山。

大塚は今回かぐや姫の幼なじみである道児に抜擢され、この5月に東京でまず秋山のパートナーとして道児デビューを迎える。
「まだ僕は『かぐや姫』で主役デビューしていないのですが、ここまで話がどんどん膨らんできていることにすごくプレッシャーを感じています。友佳理さんと穣さんが『かぐや姫』の創作を始めた2017年当時、僕は東京バレエ団入団前で、まだ海外にいた頃でした。その時からもう『かぐや姫』が始まっていたんだと知り、生半可な気持ちでは臨めないなと......。ガルニエ宮もありますが、まずはしっかりと東京文化会館で、秋山さんと新たな『かぐや姫』を演じられたらと思っています」と、気を引き締めた。

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秋山瑛 © Yuji Namba

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大塚卓 © Yuji Namba

本作で金森は振付家として2024年のブノワ賞にノミネートを、秋山はかぐや姫役で日本のバレエ団に所属している舞踊家として初めて女性ダンサー部門にノミネートされた。秋山はモスクワのボリショイ劇場で開催されたガラ・コンサートで踊っている。
当時を振り返り、「1幕のパ・ド・ドゥを柄本弾さんと踊らせていただきました。踊る前はどんな反応がくるだろうと予想もできなかったけれど、すごく綺麗なバレエだったと言ってくださる方もたくさんいらしてうれしかったです」と秋山。斎藤も「穣さんに相談して、1幕のピアノ曲『月の光』を使ったパ・ド・ドゥを、バレエシューズからポワントに変えて、コンサート用にしてもらいました。とても綺麗な仕上がりになりました。最後の月の形をしたリフトでは観客からすごい歓声があがり、その日のコンサートで1番ウケていましたね」と手応えを語る。

本作は東京バレエ団にとって『M』以来30年ぶりのオリジナル全幕作品であり、金森にとっては初めて外部のバレエ団に提供した全幕作品でもある。東京バレエ団は金森の師であるベジャール作品やイリ・キリアン作品をレパートリーに持ち、偉大な師と肩を並べた形だ。
「私自身が薫陶を受けた、自らの出自に関わる繋がりを、東京バレエ団との強烈な縁として感じています。自分がルードラ・ベジャール・ローザンヌにいたとき、東京バレエ団がローザンヌへ公演に来て、ベジャールさんの家でパーティがある、日本人だからおいでと言われて行ったのを今でも鮮明に覚えてます。まさかこういう日が来るとは当時は思いもしませんでした」と金森。
日本人振付家のバレエ全幕作品をもって海外公演へ挑む。その意義について、あらためて口にする。
「私自身が東京バレエ団から委嘱を受けてまず掲げたのは、新しいバレエを創るんだ、ということ。西洋で長い年月をかけて磨かれてきたクラシカルな伝統の構造を踏襲した上で、新しいものを創るのが私がミッションとして掲げたテーマでした。そのテーマに沿って考えたとき、『かぐや姫』という物語がふさわしいと思った。
日本の新しいバレエ性を見せるんだ、ということがすごく大事だと思います。海外で実績を重ねてきた東京バレエ団が、さらにこの『かぐや姫』をきっかけに世界に羽ばたいていってくれたら非常にうれしく思いますし、何より今回『かぐや姫』がある種の成功を収めることによって、この国からもっともっと若い振付家たちが夢を持ってくれたらと。バレエ団に新しいバレエを創って世界に、という夢を与えられたらと思っています」

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© Yuji Namba

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© Yuji Namba

<公演情報>
東京バレエ団『かぐや姫』全3幕 プロローグ付

2026年5月5日~5月6日
東京文化会館(上野)
https://thetokyoballet.com/performance/kaguya2026/

第37次海外公演(イタリア)
2026年12月
上演予定作品:『かぐや姫』第1幕、他作品併演

第38次海外公演(フランス)
2027年5月26日(水)~5月29日(土
パリ(会場:パリ・オペラ座ガルニエ宮) 他
上演予定作品:『かぐや姫』全3幕 プロローグ付

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