ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2011.09.12]

日本と世界で活躍するダンサー40名が震災への深い想いを込めて踊った

オールニッポンバレエガラコンサート2011
〜東日本大震災復興支援チャリティ〜

日本と世界で活躍するダンサー40名が集結して、東日本大震災復興支援チャリティ「オールニッポンバレエガラ2011」が開催された。
今、世界の各都市では多くの日本人ダンサーたちが踊っている。日本人のダンサーは高い能力を持ってい根気よく努力する。難しい振りを踊りこなしても「日本人だったら当然でしょ」とみなされることもある、ともいわれる。
そうした海外や日本で活躍するダンサーたちが連絡を取り合い、「オールニッポンバレエガラ2011」が企画された。「東北地方を中心とした被災地域のバレエ界に直接役立つ寄付を目指」すチャリティ公演であり、ダンサー自身が実行委員会を作り、ギャランティを返上し、入場料、物販収入、企業などの協賛金による収益を寄付するという。ダンサーたちが自主的に活動して開催した大震災への強い想いを込めたガラ公演だ。

tokyo1109c03.jpg 撮影/松山悦子

一回限りの公演ということもあり、会場のメルパルクホールは大盛況。人の波でうめ尽くされるばかりの満員だった。いつもの公演とはちょっと異なり、観客もいささか興奮気味だ。
全体は2部構成で、まず、志賀育恵と春野雅彦の『くるみ割り人形』第一幕のパ・ド・ドゥで幕が開いた。ほかに第1部でクラシック作品を踊ったのは、河野舞衣と荒井英之の『ディアナとアクティオン』のグラン・パ・ド・ドゥ、永橋あゆみと三木雄馬の『ジゼル』のパ・ド・ドゥ、酒井はなの『瀕死の白鳥』だった。どれも良い踊りで大きな喝采を浴びていた。河野の愛らしく落ち着いた踊りと荒井の力強いジャンプはバランスがとれていたし、永橋、三木も同じカンパニーのペアらしく息が合って、深い表現力をみせた。
また、青木尚哉と柳本雅寛が体格差を巧みにいかした『Lilly』からの抜粋を踊った。逞しい男とひ弱な男の心理が身体の動きにユーモラスに現れて、会場の笑いを誘っていた。

tokyo1109c01.jpg 撮影/小川峻毅 tokyo1109c02.jpg 撮影/小川峻毅 tokyo1109c06.jpg 撮影/松山悦子

第2部は、現在、新国立劇場で踊る長田佳世と芳賀望、厚地康雄の『海賊』のメドーラ、アリ、コンラッドのパ・ド・トロワで始まった。なかなかスケールの大きい活力のある踊りだった。続いて伊藤範子と小林洋壱がアストル・ピアソラの曲で『ブエノスアイレスの冬』を踊った。振付は同じ谷桃子バレエ団の日原永美子で、しっとりと大人の情感が漂い、思わず、南の空に想いを馳せた。
島地保武振付の『タマ』は異彩を放った作品。和太鼓の生演奏とともに超モダンなお祭り衣裳の酒井はなと今様ファッションの小尻健太、東海林靖志がエネルギッシュに「タマ」というイメージを奔放に踊った。ダンスが本来もつプリミティブなエネルギーへの日本の音、リズムを使ったアプローチと見えた。続いてパリ・オペラ座の唯一の日本人ダンサーとしてがんばっている藤井美帆は、セルジュ・リファール振付『白の組曲』からシガレットのヴァリエーション。ラロの曲にのって優しくエレガンスで愛らしい藤井の踊りに魅了された。

tokyo1109c10.jpg 撮影/小川峻毅

そして『ボレロ』を、この公演の実行委員会の中心メンバーとして奔走した西島千博が自身の振付て踊った。ラヴェルの曲に「アヴェ・マリヤ」などの歌をコラージュして、鎮魂のダンスを心を込めて見事に踊った。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、佐久間奈緒と同じバレエ団から今年、新国立劇場に移った厚地康雄は、フレデリック・アシュトン振付『二羽の鳩』よりパ・ド・ドゥ。真実の愛に目覚めるシーンを、被災した人々の再生への想いと重ねて踊っり、英国の物語バレエのエッセンスを凝縮して示した。
最後に上演されたのは、やはり実行委員会の中心でこの公演の呼び掛け人の一人でもある遠藤康行振付『Mayday,Mayday,Mayday ,This is ・・・』。メタリックに光るテーブルから平山素子がかすかに「上を向いて歩こう」と口ずさむと、浅見紘子、加藤野乃花、金田あゆ子、木下佳子、佐藤美紀、青木尚哉、大柴拓磨、大嶋正樹、柳本雅寛、八幡顕光の十人のダンサーがランダムな原色系の衣裳で踊る。色彩のバランスが素晴らしく、全体の動きを色で表わしているかのようだった。さらに白い衣裳の平山も加わって、和太鼓のリズムにのって力感みなぎる踊りが展開した。そして光りのテーブルの下から断絶する不協和な音を発しながら、黒装束の遠藤が現れてほかのダンサーたちを支配する動き。遠藤と平山の踊りとそのほかのダンサーの動きが入り交じった踊りがエネルギッシュに続いた。光りのテーブルは原子力を示唆し、遠藤が運命、平山が希望を表しているのか・・・。震災という不条理へ力強く杭を打ち込むエネルギーを掴みとろうとするかのようなダンスだった。
森下洋子、吉田都、熊川哲也も共感のメッセージをよせた日本人ダンサーたちによるチャリティ・ガラは、出演者全員のグランド・フィナーレを迎え、大盛況のうちに幕を閉じた。
(2011年8月15日、メルパルクホール)

tokyo1109c07.jpg 撮影/松山悦子 tokyo1109c08.jpg 撮影/松山悦子 tokyo1109c09.jpg 撮影/松山悦子
tokyo1109c04.jpg 撮影/松山悦子 tokyo1109c05.jpg 撮影/小川峻毅
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