ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.07.12]

リボンの綾のように踊ることの愉しさが感じられた『リゼット』

谷桃子 再演出・再振付『リゼット』
谷桃子バレエ団
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谷桃子バレエ団創立60周年記念公演の第5弾は『リゼット』。『ラ・フィーユ・マル・ガルデ』とか『リーズの結婚』というタイトルで上演されることが多く、ロシアでは『無益な用心』として上演されてきた。谷桃子が再演出・再振付けしてまとめたヴァージョンだが、ジャン・ドーベルヴァルの原振付、アレクサンドル・ゴルスキーによるスラミラフ・メッセレル、アレクセイ・ワルラーモフの再振付もクレジットされている。音楽はペーター・ルートヴィヒ・ヘルテル。
谷桃子バレエ団は『リゼット』を1962年に初演しているが、その際、メッセレルとワルラーモフはすべて口三味線で振り移しを行ったと、谷桃子は記している。原振付は1789年にフランスのボルドーで初演されたが、その後、ロシア・バレエに受け継がれた。そしてこの作品がロシア・バレエの中で、いかに愛され親しまれてきたか想わせるようなエピソードである。
 

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谷桃子バレエ団の『リゼット』は、開幕と同時に鶏の鳴き声で始まった。しかしアシュトン版のように、田園ののんびりした気分にはあまり関心を示さず、主人公のリゼットの恋人コーラへの合図、コーラの登場と二人のデート、母マルセリーヌの怒り、収穫人たちの登場と、テンポのいい踊りがつぎつぎと繰り広げられる。
リゼットとコーラのパ・ド・ドゥは、1幕のリボンを使った踊りと2幕のピクニックで友だちに囲まれた踊りが楽しかった。コミカルなタッチの中に友だちに祝福されている二人の愛の自然さがバランスよく表現されて、マルセリーヌと金持ちの葡萄園主とその息子のたくらみとはコントラストを見せる。
そしてこの舞台ではストーリーは主役ではない。ダンスが主役であって、ストーリーはダンスとダンスのシーンをつなぐためのリボンみたいなもの、そう感じさせるような快適で楽しいダンス・シーンが連続している。そこにいかにも古き良きロシア・バレエの印象を残していて、観ているほうも自ずと愉快になってしまう。

リゼットの高部尚子はさすがに軽やか。ステップが軽く滑らかなところがじつにいい。まるで舞台というキャンバスに明るい色彩の水彩画の筆を運んでいるようなタッチで、作品全体のリズムをリードしていた。コーラの今井智也も伸びやかに踊った。このペアは作品の醍醐味を充分に味わせてくれた。リゼットの母親は赤城圭。全体を通してとぼけた味が出た。踊ることの愉しさそのものが、直接、客席に伝わってくるような素敵な舞台だった。
(2010年6月23日 めぐろパーシモンホール 大ホール)

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撮影:スタッフ・テス 谷岡秀昌
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