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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2010.07.12]

優れたクラシック・バレエの豪華さの表現、熊川哲也版『眠れる森の美女』

熊川哲也 演出・振付『眠れる森の美女』
K-Ballet Company

K-Ballet Companyの熊川哲也版『眠れる森の美女』は、2002年に初演され06年に再演されている。今回はオーロラ姫を松岡梨絵、浅川紫織、フロリムント王子を清水健太、遅沢佑介で観ることができた。

熊川版『眠れる森の美女』は、プロローグの冒頭、オーロラ姫の洗礼式に招待されなかったカラボスの怒りのシーンから始まる。一方、六組の妖精たちの踊りは華やか。それぞれのソロのヴァリエーションもじつにうまくオーケストラの音楽と一体化していた。自前のオ−ケストラケをもつ強味だろう。
妖精たちのソロのヴァリエーションとカバリエたちとの踊りを巧みに組み合わせた善の妖精の踊りに続いて、カラボス率いる悪の妖精のエネルギー溢れる乱舞。さらに第1幕の人間の王女オーロラのローズ・アダージョへと続いて、コントラストの鮮やかな舞踊が、物語の流れに沿って鮮やかに構成されている。K-Ballet Companyの『眠れる森の美女』舞台は、プティパの創造の趣旨を花開かせ、クラシック・バレエのほとんど究極といってもいい豪華さの表現を試みているのである。

第1幕のカラボスは、自分の名前を招待状から外したカタラビュットをわざと使って、鋭い針の付いた糸巻きをオーロラ姫に手渡させ、悪知恵を使った悪の妖精ぶりも強調してる。そして2幕の冒頭では、無聊をかこつ王子が射止めた獲物の大鹿と同時に彼のダーツの腕前を見せるなど、細部の演出もあだやおろそかにしていない明快な演出家の姿勢がみられた。続く王子のソロのヴァリエーションは秀逸。煩わしさを振り切った心情が、新たな理想の女性の出現をイメージさせる気持の流れがよく表れていた。これもまた細やかな演出的配慮が生み出した効果だろう。

主役は俊敏で深い想いを表現することに成功した清水、品の良いキャラクターが作品全体のクオリティを上げている松岡。力強くスケールの大きな遅沢とゆったりと優しさを湛えた浅川のバランスは、なかなか見応えがあった。K-Ballet Companyらしい漲る若さが感じられる舞台だった。
熊川も名優と讃えるキャシディのカラボスは素晴らしい。大仰なジェスチャーはむしろ抑え気味だったが表現の奥行が感じられた。
(2010年5月30日 東京文化会館 6月26日 Bunkamuraオーチャードホール)