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[2010.04.12]

パワフルなダンスが描いた恋の行方、エイフマン『アンナ・カレーニナ』

Boris EIFMAN Anna Karenina
ボリス・エイフマン『アンナ・カレーニナ』
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レフ・トルストイの大長編小説『アンナ・カレーニナ』を原作とする舞踊は、マイヤ・プリセツカヤが夫君のシェチェドリンの音楽により1972年にボリショイ・バレエに振付け、自身が主演した舞台、アンドレ・プロコフスキーがオーストラリア・バレエに振付け、法村友井バレエ団がレパートリーとしている作品(音楽はチャイコフスキー)などがよく知られている。最近ではアレクセイ・ラトマンスキーが振付けているが、いまだ日本では上演されていない。

ボリス・エイフマンは『アンナ・カレーニナ』を2005年に振付けている。エイフマンは、複雑な時代背景の中に、二つの大きな物語が流れる原作から、アンナ、カレーニン、ヴロンスキーが織り成す愛の三角関係に絞ってダンスシーンを展開している。
トルストイの『アンナ・カレーニナ』を評して、ドストエフスキーは「文学作品として完璧なものである」と言い、トーマス・マンは「全体の構図も細部の仕上げも、一点の非の打ちどころもない」と言ったそうだから、この小説が文学として非常に優れた構成だったことは間違いないだろう。
エイフマンはそうした完璧とも言われる文学作品を、舞踊家として大胆に舞台化したわけである。
ドラマの焦点はアンナのヴロンスキーへの愛と夫カレーニンとの葛藤。貴族やブルジョア的世間、軍人などはそれらしい衣装を着けた群舞で表してコントラストをつけ、3人の主役のドラマを浮かび上がらせる。アンナは心理的に追いつめられ、ついには死を選び地獄のような孤独に晒される。
エイフマンは、アンナの中には「傍目にはカレーニンや息子や周囲の人々が知っている貴婦人であり、もう一人は情欲の世界に耽溺する女性」という2人の人間が棲んでいた、という。その帰結がこのドラマのエンディングということになるのだろう。

身体を激しく曲折、伸張し、リフトを多用するパワフルなダンスが奔放に展開した。背景に大きな半円形を鉄パイプで組んだ装置とチャイコフスキーのメロディと、激しい劇的表現が独特な雰囲気を醸した。確かに強烈な舞踊表現も見られたが、力で押し切ろうとするような演出はやや単調で繊細とは言えず、もうひとつ説得力に欠けた。
雪の舞い散る中、機関車を背景に踊る女性の社会的・時代的存在を象徴するようなソロが鮮烈な印象を残すプリセツカヤの作品とは、また異なった趣の作品だった。
(2010年3月21日 新国立劇場 中劇場)

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撮影:瀬戸秀美
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