石井潤太郎と市橋万樹のクリエイティブユニット、blankの初公演「First Collection」──秋山瑛、奥村康祐他が集って
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すずな あつこ Text by Atsuko Suzuna
クリエイティブユニット blank
「First Collection」石井潤太郎、市橋万樹:振付
2020年、コロナ禍のなか、『frustration』を配信上演で発表したのがスタートの石井潤太郎と市橋万樹のクリエイティブユニット「blank」。谷桃子バレエ団の同期として出会った二人は、二人ともが、ゆくゆくは "作品を創ること" を考えていたそうで、石井の演出、市橋の振付という形で作品創りを重ねている。座高円寺での合同公演『ミル』や新国立劇場中劇場での谷桃子バレエ団創作公演『Alive』、名古屋の松岡伶子バレエ団「アトリエ公演」などで作品を発表してきた。
私は数年前から、松岡伶子バレエ団のアトリエ公演や大阪で中野吉章がプロデュースする「World Dream」公演などで彼らの作品に触れ、クラシックの技術を基にしながら、様々な新しい感性を活かした試みに挑戦した作品を、とても興味深く観て来た。
その彼らの、初めてのリアルな単独公演が今回の「First Collection」。日本トップレベルのダンサーが多数出演する見応えのある舞台となった。

『Classic in b』
プリマ:庄田絢香、プリンシパル:吉留諒

『Classic in b』
プリマ:庄田絢香、プリンシパル:吉留諒
まず幕開けは『Classic in b』。ブラームスの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調第3楽章」に乗せてのシンフォニック・バレエだ。タイトルの"b"は、ジョージ・バランシンに敬意を表してのものだろうか。
クラシック・チュチュを身に着けてのクラシックの技術を活かした作品。2022年の初演時は学生ダンサーのために振付けられ、学びのなかで取り組まれたフレッシュな舞台だったのだが、今回は、プロのダンサーで。ものすごく速い部分も多くテクニカル、それを庄田絢香と吉留諒を中心に、実力派がしっかりと観せてくれた。
続く『Scribble』は、無音も活かしての、ひょうきんな面白みも感じさせるコンテンポラリー。Scribble=落書き、殴り書きという意味だが、牧村直紀、吉田周平、関口啓の男性3人に女性、渡辺幸の4人が、演劇的な流れを感じさせながら、高い身体能力をフル稼働させたようなアクロバティックな動き。
そして、『ダイイングスワン』。タイトルの通り、後半には、サン・サーンスの「瀕死の白鳥」が使われている。だが、前半は、まったく違う曲、「フニクリ・フニクラ」が高らかに歌い上げられてたり、奇想天外というか、頭で理解するというよりも、なんだか、ぐいぐいと引っ張り込まれて凝視せずにはいられないような......そういう力が舞踊が本来持っている、持つべき力なのかも知れない。中心を踊った清田カレンの健康的で艶やかな可愛らしさも、この作品によくあっていた。
blankの最初の作品という『frustration』は、八幡頼光を中心に、吉田周平、関口啓、小澤倖造、土井翔也人と5人の男性が踊った。コロナ禍でのダンサーたちのフラストレーションが爆発するような、危機感のなかでの大きな迫力が凄かった。
打って変わって、品の良い古典のグラン・パ・ドゥとなったのが『Pas de deux in b』。『海賊』からピックアップした音楽を組み合わせてのアダージオ、男性ヴァリエーション、女性ヴァリエーション、コーダ。まったくオリジナルな振付だが、まるで踊り継がれた古典作品のような空気感を漂わせながら秋山瑛と奥村康祐が踊った。この二人の組み合わせは初だというが、秋山の可愛らしさ、奥村のちょっと中性的な優しさがよく合い、さすがの仕上がりだった。
ラストは『Not chained』。舞台の中央後方にチェーンのオブジェ。その前で12人のダンサー達が踊る。社会、人々の繋がりが継続しながら、変化していく......苦悩、ハッキリとしたある人物の意志、そんなさまざまな内側からのものが、激しい動きや、ある時は潔い静止のなかで自然に表現される。清田カレン、牧村直樹、それぞれの踊りに、要所要所で惹きつけられた。他のダンサーも高レベルなダンサーが揃い、ラスト演目に相応しい仕上がりだった。
(2026年2月14日マチネ タワーホール船橋)

『Scribble』
牧村直紀、吉田周平、関口啓、渡辺幸

『ダイイングスワン』清田カレン

『ダイイングスワン』清田カレン

『frustration』
八幡顕光、吉田周平、関口啓、小澤倖造、土井翔也人

『Pas de deux in b』秋山瑛、奥村康祐

『Pas de deux in b』秋山瑛、奥村康祐

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