ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2010.02.10]

高木綾と柄本弾が抜擢に応えた『ラ・シルフィード』

ピエール・ラコット演出:振付
東京バレエ団『ラ・シルフィード』
tokyo1002l01.jpg

東京バレエ団が3年振りにロマンティック・バレエの精華、『ラ・シルフィード』を上演した。スコットランドの農村を舞台に、結婚式を控えた青年が空気の精に魅せられたため悲劇を招く物語。上演したのは、フィリッポ・タリオーニの原案をピエール・ラコットが復元した版である。今回は、期待の若手が主役を踊る“マイ・キャスト シリーズ”で抜擢された、高木綾と柄本弾のペアが初主演した公演を観た。

高木は2001年の入団。『眠れる森の美女』のリラの精や『ジゼル』のミルタ、『ドン・キホーテ』のメルセデス、『ラ・バヤデール』のガムザッティなど、性格の異なる役を演じている。柄本は2008年に入団したばかりの弱冠20歳の新進。『ドン・キホーテ』の闘牛士、『白鳥の湖』のロットバルトなどを踊ったが、大役の経験は少ないだけに、今回は異例ともいえる抜擢である。空気の精、ラ・シルフィード役の高木は、先輩たちの演技を研究したのだろう、背から首や腕にかけてのラインがたおやかで、繊細な身のこなし、細やかな脚さばきを見せた。だが、表現はぎこちなさが残る。もっとコケティッシュでいたずらっぽい感じが出せればと思う。ジェイムズ役の柄本はすらりと長身でルックスも良く、雰囲気のあるダンサー。複雑な脚さばきを卒なくこなし、村の青年らしい朴訥さも漂わせた。だが、ラ・シルフィードと花嫁エフィーの間で揺れる心や、ラ・シルフィードを捕えておけない苛立ちの表現などは、工夫の余地がありそうだ。二人とも、確かに改善すべきところはあるが、立派に抜擢に応えたといえそうだ。

エフィーを演じた田中結子は、一つ一つの動きを丁寧にこなし、安定した踊り。ジェイムズへの愛と不信感に揺れる心を伝えながら、芯の強さも感じさせた。ジェイムズとエフィーのパ・ド・ドゥにラ・シルフィードが割り込み、三つ巴の踊りと化すシーンは、それぞれの思いが交錯する様が目に見えるようで、スリリングだった。松下裕次は、ジェイムズの友人でありながら彼の花嫁エフィーに思いを寄せるガーンを演じたが、少々直情的すぎた気がする。魔法使いマッジは後藤晴雄。若者たちの手相をみてやる場面ではアクの強い演技で存在感を示した。ベールに魔法をかけるシーンでは派手に跳び回ったが、マッジは腰の曲がった年寄りなのだから、ジェイムズ憎しの気持ちがたかぶり、跳躍にも勢いがついたという形が出ればと思った。第1幕の若者たちの素朴な趣の群舞と、第2幕のシルフィードたちによる幻想的な群舞の対比も生きていた。
(2010年1月18日、東京文化会館)

 tokyo1002l02.jpg  tokyo1002l03.jpg

撮影:photo:Kiyornoi Hasegawa
※写真キャストは上野水香、レオニード・サラファーノフ、西村真由美
※画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。