ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.12.10]

特徴的な3作品が上演された第48回バレエ・フェスティバル

左右木健一:振付『The Dying Poet 瀕死の詩人』
矢上恵子:振付『Bourbier』
マシモ・アクリ:振付『タランテラ・ナポリターナ』
日本バレエ協会 第48回バレエ・フェスティバル

日本の創作バレエが盛んになることを目的として、日本バレエ協会が開催しているバレエ・フェスティバルが48回目を迎えて、三つの作品を上演した。
まずは、新国立劇場バレエ団が設立された頃に踊っていたが、その後、仙台を拠点として活動を行っている左右木健一が振付けた創作バレエ『The Dying Poet 瀕死の詩人』。
嫉妬や恨みといった人間の妄執とピアノの詩人ショパンの曲を対置して、現代は心から詩を詠うことはできるか、という問いかけを試みたダンスだった。オープニングでは黒衣の男が観客の関心を舞台へと導く。
広く半円形に椅子を置いて20名のアンサンブルが並び、その中心のスペースで西田佑子、金田あゆ子、森田真希、横関雄一郎、梶谷拓郎という身体のよく動くソリストが踊る。衣裳は全員がグレーの総タイツですっきりとした印象である。
女性2人男性3人のソリストが様々にからんで怒りや妄執、傲慢などが抗い融和がもたらされない情景をフォルムと動きで繰り広げ、周囲のアンサンブルも様々に反応する。フォルムや動きはなかなか変化に富んでいて目が離せない。光りや色彩もシックで洗練されているレベルの高い創作だった。ただ、嫉妬や恨み、傲慢などといった表現がダンサーの表情に直接込められていたのがちょっと気になった。少し力が入りすぎていたのかも知れないとも思った。

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続いてK★CHAMBER COMPANYを主宰し意欲的コンテンポラリー・ダンスを発表している矢上恵子の『Bourbier』。2007年に初演された作品で、主演の福岡雄大がヴァルナ国際バレエ・コンクールでその一部を踊って三位入賞を果たしている。同時に振付賞も受賞した。
「一人の男性がカルマに翻弄されそうになりながらも自分の人生を歩いていく」姿を描いたという。金属パイプと黒い幕を使った現代的な感覚の装置から、つぎつぎとダンサーが登場し、じつに多彩な情景をグループが描き、アフリカン・ミュージックなども挿入されてリズムもテンポもつぎつぎと変化し、瞬きも許さないほどスピーディに複雑なダンス・シーンが展開していく。
モティーフはシンプルで大きな特徴はないが、変幻多彩な動きで見せる作品だった。

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最後は一変して華やかな色彩が溢れんばかりの『タランテラ・ナポリターナ』。イタリアのフィレンツェ・バレエ団出身で、新国立劇場バレエ団などで踊り、アクリ・堀本バレエ団を主宰するマシモ・アクリが振付け、昨年9月に初演した。音楽は『ゼンツァーノの花祭り』で知られるエドヴァルド・ヘルステッドの曲を使っている。
コスモスが咲き乱れるように、ウエスト部分が可憐に様々に色どられたチュチュを着けたアンサンブルと、下村由理恵、佐々木大、奥田花純、輪島拓也などのソリストたちが華やかに踊った。明るく光り輝くナポリの太陽の下、タンバリンをかざして踊るテンポの速いタランテラがじつに心地いい。
ラストは白い花を繋いだ飾りを持ったアンアンブルとタンバリンをもったグループ、そして下村と佐々木が入り乱れるように踊って活気溢れる舞台を締めくくった。帰路についても爽やかな余韻が楽しめた公演だった。
(2009年11月13日 メルパルクホール)

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撮影:飯田耕治(スタッフ・テス)
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