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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.12.10]

音楽的な豊かさを感じさせた キエフ・バレエ『白鳥の湖』

KYIV BALLET /Valerii Kovtun " Swan Lake"
キエフ・バレエ/ワレリー・コフトゥン『白鳥の湖』
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キエフ・バレエは、美貌の女性が首相を務めることで知られるウクライナの首都キエフに拠点を置いている。ここは世紀の大歌手シャリアピンや巨匠プロコフィエフの故郷。そしてよく言われることだが、ウクライナはたいへん優れた舞踊家、ダンサーを数多く輩出している。バレエ・リュスのスター、ニジンスキー、ニジンスカ、リファールから、現在舞踊家として大活躍しているラトマンスキー、マラーホフ。現役の主要ダンサーでは、ザハーロワ、コジョカル、サラファーノフ、マトヴィエンコなどなど枚挙にいとまがない。
キエフ・バレエ団の来日公演『白鳥の湖』の舞台を観ていると、そういった逸材の原石が踊っているのではないか、と思わず目を凝らしてしまう。

第1幕のパ・ド・トロワを踊ったカテリーナ・カザチェンコとユリヤ・トランダシルは素晴らしいプロポーションをしていたし、なかなか優雅な雰囲気を漂わせることのできるダンサーだった。第2幕の花嫁候補に扮したカテリーナ・アライエワやカテリーナ・メテルキナも華のある踊りで観客を楽しませた。
オデット/オディールを踊ったのは、キエフ・バレエ団のスターダンサーのエレーナ・フィリピエワの後継者と目されているナタリア・マツァークだった。優れたプロポーションを活かしてオデットはゆったりと余裕を持って踊った。ただオディールはコントラストを付けようとしたためか、力が入っていたようにも感じられた。もう少し、ジークフリードの心理を見透かすような蠱惑的な演技を期待したい。
男性ダンサーでは、デニス・ニェダクが静かに優雅さを滲ませることを心がけてジークフリード王子を踊った。丁寧な踊りで好感が持てたが、本当のノーブルな雰囲気にはもう一歩。あるいは舞台表現だけで表すことのできない芸術的な背景が必要なのかも知れないとも思った。
ダンスシーンの多いロットバルトは、チェコ出身のワーニャ・ヤンが踊った。なかなか活力のある踊りで感心したが、もう少し演出との調和にを工夫すればさらに舞台全体が盛り上がると思われる。

キエフ・バレエ団の『白鳥の湖』はワレリー・コフトゥン版だが、シンフォニック・バレエの礎を創ったことで知られるフョードル・ロプホフの振付けを残している。キエフ・バレエの『白鳥の湖』の舞台には、とりわけ音楽的な豊かさを感じるが、それは豊穣な国土とロプホフの影響が現れているからなのだろうか。
(2009年11月20日 東京国際フォーラム ホールA)

写真提供/光藍社
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