ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.10.13]

勅使川原三郎の新作『鏡と音楽』の宇宙感覚と存在感

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最近、特に活発に創作活動を展開している勅使川原三郎の新作『鏡と音楽』が、新国立劇場中劇場で上演された。
仄暗いが舞台の奥行きを感じさせる空間にぽつんと立っているダンサーたちを、激しいスピードで回転する照明の光が、まるで炎の中の焰の芯に佇んでいるかのように浮かび上がらせる。
光が激しく回転する時はダンサーたちは静止し、一定の照明に照らし出されると激しく踊る。躍動と静止、光と黒い頭巾を被ったダンサーなどの二元的要素が複雑に巡りあって宇宙的感覚を構成しているかのように感じられる。

勅使川原公演ではお馴染みともいえる落雷のような強烈な崩壊感覚をともなったサウンドと、フロアと平行にあるいは垂直にハイスピードで回転する光が、独特の効果を生む。ダンサーを舞台空間に様々な配置で立たせ、広大無辺の宇宙とダンサーの存在のコントラストを際立たせ、観客と不思議な存在感を共有する。
バロック風の音楽が流れると、鋭いモダンな感覚に貫かれて千変万化する照明の中で、ダンサーたちはまるで誘蛾灯に群れる夏の虫のようにランダムに、二人だったり三人だったり一人だったり四人になったりしながら登退場を繰り返し、スピード感のある動きをみせる。
無論、勅使川原と佐東利穂子の見事なソロが登場して、高揚感をもたらす。

2枚の金屏風を背景にシルエット浮かび上がらせたりして、終盤に至るとダンサーたちは、渡り鳥のように雁行を組んでスカイウォーカーとなり、闇に消えたりまたその姿を現したりを繰り返す。
そして舞台手前から発せられた光の帯の中に、一瞬だけ、ダンサー全員の顔がぽっかりと浮かび上がる。光と音と動きが微妙なバランスの中で交錯するメカニカルとも感じられたダンスの中に、ふっと現れた人間的なまたたき。作品全体とも拮抗するような、あるいは生命と宇宙が交信を交わした瞬間のような素晴らしい瞬間だった。
(2009年9月25日 新国立劇場 中劇場/撮影:鹿摩隆司)