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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.09.10]

ブロードウェイミュージカルの名作『コーラスライン』22年ぶりの日本公演

ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』
マイケル・ベネット原案・振付・演出
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1975年にわずか299席のオフ・ブロードウェイのパブリック・ニューマン劇場で幕を開け、3ヶ月後にはブロードゥイ進出、翌76年にはトニー賞9部門受賞を果たし、15年に渡ってロングランされ、一旦終演が決まるとそれを惜しむ人々が劇場につめかけ公演が延長されたという。『コーラスライン』は『ウエスト・サイド物語』とともにアメリカン・ミュージカルの不朽の名作と讃えられている。
2006年からは16年ぶりにブロードウェイで再演されたが、今度はその『コーラスライン』のオーディションを題材にした映画『ブロードウェイ♪ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢〜』が製作、ロードショーされた。
そして、今年、Bunkamura20周年記念企画として『コーラスライン』の日本公演が22年ぶりに行われた。

新作ミュージカルの最終審査に残った男8人、女9人の17人のダンサー。『コーラスライン』は、その中から8名のコーラスダンサーを選ぶオーディションの有り様を描くミュージカルである。
原案・振付・演出のマイケル・ベネット(1987年エイズで亡くなる)は、実際にダンサーを集めて徹底的にインタビューを行い、ショービジネスに賭けるダンサーたちの家庭や青春の苦悩と希望を赤裸々に捉えることに成功した。
オープニングの「I Hope I Get It」が歌われて、何の装置もないオーディションの舞台で、振付家のザックはダンサーたちに「自分がなにものなのか」語るように求める。ダンスと生きることは同じだからである。

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有名なポールの告白。ゲイであることを隠し、女装して舞台に立っているところを両親にみられる。その時、父はプロデューサーに「息子をよろしく」と声を掛けて去っていく・・・。この顛末を知っている告白を聞くことを楽しみにして、何回も『コーラスライン』を観る人がいるほど秀逸なミュージカル・シーンである。
また、ザックのかつての恋人でスターダンサーだったが、今は必死でコーラスダンサーのオーディションを受けているキャシーとザックの厳しいやりとり。
ダンサーたちはオーディションという、身も心も自身のすべてが晒されるステージで、振付家や同じ立場のダンサーたちと対話を交わしながら、心の屈折を少しずつ解放していく。そして最後には、17名のダンサー全員の気持ちがひとつとなり金色の衣裳を着けて「One」を歌い踊る。スポットライトに照らし出されたスターのソロではないが、一体となったこの上なく美しいラインが舞台に躍動する素敵なエンディングである。
アメリカらしいプラグマティックな方法で、少々楽天的にみえなくもないが、見事に創られた感動のミュージカルである。
(2009年8月12日 オーチャードホールのゲネプロ)

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