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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.08.10]

現代的感覚が活きた中島、石井の『ロミオとジュリエット』

中島伸欣 演出、石井清子、中島伸欣 振付『ロミオとジュリエット』
東京シティ・バレエ団
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幕が開くとにぶいメタリックな光りを放つ天蓋をデフォルメしたようなオブジェを天に、左右に移動する城壁のいくつかの面。この面が舞台を横切るとその都度シーンが変わっていく。こちらは2009年の最新作『ロミオとジュリエット』(演出・中島伸欣、振付・石井清子、中島伸欣)である。
天のオブジェは中世の息詰まるような閉塞感を表し、移動する城壁の装置がルネッサンス前夜の空気の流れを表しているかのような、時代背景を巧みに表した美術(江頭良年)。オブジェから反映するメタリックな光が、ロミオとジュリエットの愛と死のドラマを独特の感触で浮かび上がらせる照明(足立恒)。
このわずか数日間を駆け抜けた青春の悲劇を、優れた美術と照明が浮かび上がらせようと試みている。

物語には大きな変更はないが、マキューシオの死に怒ってティボルトを殺したシーンでは、多くのヴァージョンは母親のキャピュレット夫人が大きな嘆きを表現する。しかしここでは、ジュリエット自身が兄の非業の死を激しく悲しむ。翌日にはこの兄を殺したロミオと初めての夜を迎えるのだから、ジュリエットの悲嘆は逆にその愛の深さを表すことになる。こうしてジュリエットの心にフォーカスして、彼女がパリスとの結婚を拒否して、一時的に仮死状態に陥る薬を飲み下すまでの心理の陰影を鮮やかに描いている。
しかし、ロレンス神父からジュリエットがやがて甦ることを知らせる手紙が、運命の悪戯によって届かず悲劇になる。そしてここに、一方だけに赤い手袋をはめた黒い衣裳の4人の運命の人々(女性)が登場する。4人のうちの一人が倒れて、ロレンス神父の使いと絡み、ロミオへの伝達が遅れるところなどの表現はおもしろかったのだが、やはりこの運命の人々は、事態の説明に終始しているという印象を与えてしまい残念だ。
初夜を過ごしたベッドが墓石となり、息絶えた二人をメタリックな大きな布ですくいあげるようにクローズアップするラストシーンは、鮮やかな演出で充分に効果的だった。
ジュリエットを踊った橘るみは、強い悲しみの表現が成功していた。ロミオの黄凱はケレン味なく、誠実な人物像を創った。マキューシオのチョ・ミンヨン、パリスの小林洋壱も好演だった。
(2009年7月18日 テアラこうとう)

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