ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.07.10]

ヤン・ファーブルの超過激な21世紀パフォーマンス『寛容のオルギア』

ヤン・ファーブル『寛容のオルギア』
さいたま芸術劇場

開幕劈頭。舞台上には数人のアスリートが思い思いにストレッチしている。銃を肩に掛けたテロリスト風(一時代前の感じだが)のセコンドがそれぞれのアスリートに付く。チーンとゴングが鳴ると、アスリートたちは一世にトランクスの中に手を突っ込んで激しく小刻みに動かす。競争を煽るナレーションが入り、国家がどうとか言っているのでどうやらこれは、「インターナショナル・マスターベーション・コンペティション」らしい。ファーブルは、テロルとマスターベーションをオルガスムスに達することのない行為として相関して捉えているかのようにみえた。
 

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コカインだろうか、鼻から何かをすする音がエイリアンの呼吸音のように時折、聴こえる。SEX、ドラック、テロルの氾濫から、アラヴとイスラエルの対立、イスラム教とキリスト教の対立、人種差別、さらにK. K. K.やネオナチまで人類のどうにも癒し難い疾病が次々と舞台を席巻する。しかし、常に舞台に配置されているのは、安楽な時間を保証する米国チェスタトーン社の高級ソファ。銃を担いだテロリストがこのソファに足を高々と組んで、マスタベーションを繰り返す・・・。まさに21世紀の現実を提示する構図というべきだろう。
ゴルゴダの丘に、自身を磔にする十字架を背負ったキリストが登場するが、ファッション・デザイナーだかプロデューサーみたいな男に、瞬く間に「スーパースターJ.C.」に仕立て上げられる。
”ファック・ユー”が雨あられと乱発され、あらゆるインターナショナルな偽善的行為が罵られる。神無き時代のグロテスクな欲望のエネルギーが、様々のはけ口を求めて大波のように押し寄せる有り様を、大胆にパロディ化したシーンをこれでもかとコラージュした舞台である。
 

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米ソの2極対立が崩壊してメルクマールを失い、神が危ういバランスをとることができなくなった世界の、どうしてもオルガスムスに達っせない21世紀の人々の相貌を、モンティパイソンの手法を使って描いたと。また、著名な昆虫学者を遠い祖先にもつファーブルは、人間を昆虫の生態のように描いた同じフランドル出身の画家ヒエロムス・ボッシュの絵画のイメージもあった、とこの作品についてコメントしている。

どのシーンにも鋭い諧謔の視線が貫かれていて興味深いが、すべてが強度の表現であり、絶え間なく同じ刺激を受け続けて少々疲れた。これはファーブル作品のひとつの特徴なのかもしれない。私の臨席の女性は、途中で舞台から目をそらせていたようだった。しかしまた、大きなカーテンコールを受けた公演でもあった。
(2009年6月27日 さいたま芸術劇場 大ホール/写真(C)池上直哉)