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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.07.10]

カレーニョと本島美和が踊った新国立劇場のプティ版『コッペリア』

ローラン・プティ『コッペリア』
新国立劇場バレエ団
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ローラン・プティはクラシック・バレエの全幕を再振付けする場合は、かなり思い切ったアイディアを使って、プティ流の展開を試みる。『くるみ割り人形』では、クララは大きな気球に乗って旅をするし、『眠れる森の美女』は、『夢の国のリトル・ニモ』で知られるコミック・アーティスト、ウィンザー・マッケイのイメージを使って振付けている。

『コッペリア』の場合もポーランドの田舎の村から、都会の裏町に設定を変えている。初演のサン=レオン版は、領主が寄贈した鐘の下、結婚が祝福されるお祭りの前夜の物語だが、プティは都会の裏町の老マッドサイエンティストの孤独を、若い恋人たちとのコントラストの中に描いている。
初演版では、鐘はもちろん「時」を表していて、19世紀初頭と思われる田園のある村という時間が循環しているような完結した世界が背景。そこで起きた人形作りと若者のスリラー・コメディ風の奇談だが、マズルカ、麦の穂の踊りやチャールダッシュ、ボレロ、ジークなどの多彩な民族舞踊が物語の展開と調和して、ほのぼのとしたいい雰囲気を醸している。

プティ版は、社会から孤立した老人が、理想の女性を想い描いて自身が創りだした人形と乾杯を交わし、「時の踊り」の曲に合わせてダンスを踊る。この孤独な偏愛を際立たせ、老いの哀愁を漂わせるシーンがクライマックスとなっている。このシーンをローラン・プティ自身が踊って練達の至芸をみせ喝采を浴びる、という仕掛けがプティ版のミソである。現在その踊りは、プティの振付の伝道師でもある、ルイジ・ボニーノが引き継いでいる。
ただ、誠に残念ながら、ボニーノのコッペリウスのダンスはどうもあまり好きになれない。ボニーノは、プティが振付けたチャップリンの世界を表した踊りが当たり芸で、印象も強いためかどうもそのイメージが抜けない。『コッペリア』の舞台にチャップリンが登場したかのように見え、なかなか馴染めないのである。

フランツはホセ・カレーニョが踊り、時にすまして気取った踊りを見せ若さも表していて良かった。スワニルダは本島美和。第2幕のコッペリウスとのやりとりも安定した踊りと演技だった。
(2009年6月26日 新国立劇場 オペラパレス/撮影:瀬戸秀美)

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