今回のK バレエ カンパニーの熊川哲也版『ジゼル』の再演では、東野泰子がジゼル、清水健太と宮尾俊太郎がアルブレヒトを初めて踊った。私は、ジゼルに松岡梨絵、アルブレヒトに宮尾俊太郎、ヒラリオンに遅沢佑介、ミルタに松根花子が扮するというキャスティングで観ることができた。
宮尾俊太郎は、フランス留学ではモニク・ルディエールに師事、ロゼラ・ハイタワーのスクールで学んだ。2004年入団のソリストだが、最近、テレビなどメディアに登場する機会が急激に増えているダンスールノーブル・タイプである。
宮尾のアルブレヒトは、第1幕では遅沢のヒラリオンにやや押され気味で、主役経験の少なさと人柄の良さが感じられた。しかし、第2幕では、ジゼルへの愛の心と後悔の念に心理が絞り込まれたためか、見事に集中してアルブレヒトの人物像を舞台空間に浮き彫りにしてみせた。黒の衣裳もよく似合い、終盤のクライマックスでは身体を投げ打つように踊って、悲劇的な感情をいっそう高め感動的な印象を残した。
松岡のジゼルは、プリンシパル・ダンサーらしく、感情や心理の流れに乱れがなく一貫した表現力が際立った。第2幕ではゾーンに入ったかのように動きをコントロールして、美しい踊りをみせた。
ミルタを踊った松根花子は、『くるみ割り人形』の雪の女王に続いてアーティストからの抜擢だが、落ち着いてしっかりと踊った。敢えて言えば、ジゼルとミルタの対決がもっと際立ってもよかったかもしれない、とも思った。
ヒラリオンの遅沢もさすが、いささか凄みを利かせて演技力も備わっていることをみせた。
演出家は再演の度に、さらにディティールに工夫を凝らしている。『ジゼル』のような夢幻と現実が行き交うバレエこそ、ディテールにこだわって幻想的リアリティを高める必要がある、という演出家の姿勢がはっきりと読みとれる舞台でもあった。
(2009年5月14日 Bunkamura オーチャードホール)