ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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[2009.05.11]

音による存在感覚を究める
勅使川原三郎『ダブル・サイレンス』

勅使川原三郎 振付・美術・照明・衣裳『ダブル・サイレンス---沈黙の分身』
勅使川原三郎、佐東利穂子ほか
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耳鳴りのような振動音、3人のダンサーが小刻みに揺れるプロローグ風のシーンから『ダブル・サイレンス---沈黙の分身』は始まった。
無音の中の勅使川原のソロ、佐東利穂子のソロが断続的踊られ、振動音はしばしば不規則に途切れ、無音になる。するとフロアのそここから白い煙がしばし吹き上がって消える。煙はもちろん、変幻する形はあるが音は響いてこない。
ダンサーたちはひとかたまりになってがやがやとしゃべり声を出したり、突然、大きな声を発したり、激しい笑い声を不規則に発したり、全員で絶叫し合ったり・・・。勅使川原自身は、大声で話すように大きく口を動かすマイムをソロに組み込んで見せていた。
 

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人間が生きて行く環境の中で発する音、身体が自ずと発する音。音と身体の関係が様々の表現によって表されているダンスである。
私たちは、日常的に経験ですでに知っている環境の音や自身が発する音によって自分の存在を確認している。現に今も、キーボードの入力音やP.C.の操作音や警告音によって、自分の存在をはっきり感じることができている。今もし、何をしてもあるいはいくら耳を澄ませても音をまったく感じられなくなったら、存在の感覚も大きく変わってしまうに違いない。私たちは音によって世界と自分との関係を捉えて日々を生きている。
音を発する身体と、音を感受する身体の存在感覚を追求するダンスだが、勅使川原の鋭敏な感覚がさらに存在の深淵へと迫り、<沈黙の叫び>という想いに至る。
勅使川原の動きに触発され呼応する、佐東利穂子のシャープなダンスが作品の奥行きを深めている。
(2009年3月28日 Bunkamura シアターコクーン)

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