ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2009.04.10]

木佐貫邦子が4年半ぶりにソロダンス 『GRAYISH GRAY』を披露

木佐貫邦子振付・出演『GRAYISH GRAY』

 木佐貫邦子が、23歳で始めてから、年2回、年1回、隔年といった形で続けてきたソロダンス。 2004年以来、4年半振り、 21作目となった作品のタイトルは『GRAYISH GRAY』。気に入った響きの「Yellowish」や、好きだが歳から言って抵抗のあるピンクは用いず、枯れるには早すぎるが若くもない、ということでグレーという色に落ち着いたそうだ。年を重ねるとは何がどう重なるのか考えてみたくなったとも、プログラムに書いているが、それがこの作品の創作の狙いなのだろう。
 

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 白い長いポールがステージの左右手前に1本ずつ垂直に、左右後方に1本ずつ少し斜めに立てられ、ポールを結ぶように床に白線が引かれた簡素な舞台。ピアノ曲が響いた後、暗くなり、再び音楽が始まり明るくなると、木佐貫が仰向けに床に寝ており、脚で反動をつけて起き上がって動き始めた。脚を水平にあげて歩行したり、両腕と片方の肩を床につけて体を支えてポーズを取ったり、胸で天上を見るように背を反らせたり、上体を柔らかく回したり、膝を抱えてうずくまったり、床をゴロゴロと転がったり……。
中でも、軽く握った拳を腰に当ててランニングするシーンが印象的だった。それも、前を向いたまま後ろに進み、突然静止し、また後ろに走るのだ。人生というコースも、前進しているつもりでも停滞していたり、後退していたり、自分ではわからない時もあるだろう。また、体を動かし、上下や左右と向きを変えたら、それまで気付かずにいた異なる側面が見えてくるかも知れない。軌道修正もできる。そんなことを考えさせる舞台だった。
メロディーのある音楽やない音楽、騒音など、使われた音楽は様々だったが、音のない静寂の状態になると、木佐貫の振りや存在が比重を増したように思われた。全般に激しい振りではなかったが、内にたわめた力が目に見えるようだった。灰桜色というのだろうか、淡い色合いのシャツとゆるめのパンツ姿の木佐貫は、良い意味で肩の力が抜けたようで、一回り大きくなったようにも感じた。
(2009年3月22日、青山スパイラルホール)