ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2009.04.10]

白井剛が2年振りの新作で新たなダンスツルギーに挑戦

白井剛構成・演出・振付『blueLion』
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 独創的な創作と表現力で知られる白井剛が、自身は踊らずに鈴木ユキオと寺田みさこという個性的なダンサーを起用し、多彩なミュージシャンと共に新たなダンス表現に臨んだ。題して『blueLion』。
そのイメージは、「なにもない、広い大地の、小高くなった右のほう。青い色したライオンが、ぽつりと座って、こちらを見ている」というもの。創作のきっかけは花嫁とその父らしい男女を見かけたことで、最近、結婚した寺田とその父でギタリストの寺田敏雄の親娘共演を思いついたそうだ。公演は、「フェスティバル/トーキョー」の一環として行われた。
砂が敷かれた床の片隅にはベンチが棚のように積み上げられ、背面はスクリーンで覆われている。無音の薄暗がりの中、左と右から時間をずらして現れた寺田と鈴木が、腰を落とし、踵を上げた不安定な状態で重心を移動し、寝ころぶと、動きの大きさや力の加減により、砂の上に軌跡が描かれていく。消され、新たに生成される軌跡は、存在や永続といった概念の象徴だろうか。内からのエネルギーを抑え込むように静止したり、機械的な動きを見せたり、体の各部を見事に制御した2人の踊りは緊張感をたたえ、見応えがあった。

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 ピアノのイノウエユウジa.k.a.dillやヴォーカルの高橋美和子、ギターの寺田らは、ダンサーと一緒にベンチを移動して舞台空間を提示するように置き、仰向けに寝た鈴木をブロックで囲むなど、パファーマンスに参加した。ダンスと音楽は時には溶け合い、あるいは個別に自己主張するといった具合で、必ずしも有機的に結びつかず、ソロを受け渡すような演出もあった。
スクリーンには、オリに入れられた動物や高層ビルが乱立する都市、また分割された画面にその両方が映し出された。オリの中の動物は、砂の床で演技するパフォーマーたちの置かれた状況を示すようでもあり、都市の光景はコンクリートジャングルで生きる人間を思わせもした。昔なつかしい日本の町の風景や子供たちの投影は、時間の経過や記憶というもの、家族などの人と人のつながりを連想させた。2部構成、2時間10分の大作。あまりにも多くのものが盛り込まれ、全体の流れもつかみにくいため、イメージの砂漠に迷い込んでしまったような気もした。
(2009年3月13日、東京芸術劇場小ホール)

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