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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.03.10]

現代舞踊の精鋭、内田香、蘭このみ、武元賀寿子の3作品

内田香『Evocatio』 蘭このみ『ボレロ』 武元賀寿子『LIFE SCRAMBLED』
2009 都民芸術フェスティバル

 現代舞踊協会主催の<2009 都民芸術フェステイバル>参加公演が、内田香の『Evocation』、蘭このみの『ボレロ』、武元賀寿子の『LIFE SCRAMBLED』の3作品を得て開催された。
内田香振付の『Evocation』は、吉村公三郎監督の『夜の蝶』や川島雄三監督の『雁の寺』、今井正『越後つついし親不知』ほかの映画音楽で知られる、池野成の同名の曲に振付けたもの。これは6本のトロンボーンと6人のパーカッションにマリンバのソロ、という珍しい編成によって、35年前に作曲された。内田が師事した金井芙三枝が注目し、内田に伝えて振付けられることになった、という。いま聴いても主調音をなす6本のトロンボーンの響きがモダンに感じられる。
出演は、内田香と冴子、淵沢寛子。
演奏のリズムと内田の振付による3人のダンサーが、小気味良いコントラストを見せた。

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蘭このみはモーリス・ラヴェル『ボレロ』を振付けた。
舞台上には一足のシューズが置かれ、スポットが当てられる。真紅の衣裳の蘭とコール・ドが登場し、白い衣裳の中田一史も『ボレロ』にのって現れる。蘭は両手にヒールの高い靴を持っている。時折、サパテヤードを使って踊りに変化をつける。中田と蘭のデュオもあり、一度、捌けたコール・ドが再登場すると、舞台の前面にいっせいに靴が降ってきた。その靴をめいめいが履く。
最後は、蘭と中田がからみ『ボレロ』らしく盛り上がって幕となる。
舞台上に通路を作りダンサーの動かし方や配置にも工夫があり、蘭、中田、コール・ドが変化に富んだアンサンブルを見せた。

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武元賀寿子の『LIFE SCRAMBLED』は、昨年5月に初演したものを改訂した作品。
女子高生から白衣の医師、交通整理のおじさん、お掃除のおばさん、会社員、主婦、役者、宅配便配達人などありとあらゆる現実の社会の人々が登場して踊る。あけっぴろげの素の舞台にライヴ演奏、数名のカメラマンがフラッシュを焚いてあちこちを回っている。そうした現実の混沌がエネルギッシュに展開しながら、次第に統一感のある姿に収まっていく。
そしてラストは、ダンサー全員がベージュの衣裳を着けて群舞を踊り、武元のソロも観ることができた。
自由でおおらかな楽しい雰囲気がめぐっているいい舞台だった。しかつめらしくない楽観的気分が横溢していて、観客も救われる気持ちになるだろう。
(2009年2月14日 新国立劇場 中劇場)

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