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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.03.10]

和の文化にアプローチして、新しいダンスの耽美を創る 森山開次の舞台

森山開次作品集『OKINA』『弱法師 花想観』『狂ひそうろふ』
新国立劇場ダンス ダンスプラネットNo.29
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 森山開次が、新作と旧作に手を加えたものなど、いずれも能にインスピレーションを得た3作品を一挙に上演した。
『OKINA』は2004年の作品の再演。能の『翁』は、「能にして能にあらず」といわれる特別な祭儀ともみられるものだそうだ。森山は金色の長髪を靡かせ、原初の生命の動きとそれを儀式としてコントールするものを、津村禮次郎の謡の響きの中に捉えようと試みた踊りを見せた。
 森山には本能的なものを発現させる動きを創る才能があり、その存在感には、ジョルジュ・ドンのイメージを彷彿させるものがあった。
『弱法師 花想観』は03年に初演した『弱法師』に「花想観」という言葉を加えて改訂したもの。能の『弱法師』は、目の不自由な少年が梅の花の香りを感じ、心眼を開けばすべての風光が見えてくることを知る、という心のドラマ。
 加賀谷香が花そして気配に扮する。森山は花と戯れ、喜び悲しむ。暗転となり花は蘇るが、加賀谷が床のオレンジ色の丸い敷物を足の指で巻き上げ、終焉へと向かう。フルートと静寂のコラージュの中、花もまた咲きほこり凋んでいくという生命のサイクルに生きている。

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 新作『狂ひそうろう』は、能の『天鼓』から狂う(舞う)イメージを踊ったソロ。
 舞台中央に設えた所作台、背後にパーカッションのグループ(セネガルのアフリカンビート)が控える。森山は客席から”狂える”衣裳で登場し、舞台下手で踊った後、赤い木枠をくぐって所作台に上る。これがまた、あのベジャールの『ボレロ』のセットとダブって見えてしまう。
 能の『天鼓』でいえば、息子を失った父親が鼓を打つシーンに当たるのか、四方からパーカッションの黒人アーティストが台の四隅を直接叩いてリズムをとる。
それに応じて、森山の踊りのテンポが速くなっていく。そしてドラム、パーカッションが天鼓の響きとなって、踊りと音楽が渾然となってエンディングを向かえる。
 森山開次のダンスは、和の文化に積極的にアプローチして、新しいダンスの耽美的とも思われる美を創っている。
(2009年2月9日 新国立劇場 小劇場)