ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.03.10]

泥土にまみれたサロンで死後の家族が踊る
ピーピング・トムの『Le Sous Sol/土の下』

初来日ピーピング・トム
『Le Sous Sol ル・ス・ソル/土の下』
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 いわゆる<フレミッシュ・ウエーヴ>といわれて注目を集めるベルギーのコンテンポラリー・ダンスから、ピーピング・トムという新しいグループが来日した。
 アルゼンチン出身のガブリエラ・カリーソとフランス生まれのフランク・シャルティエが、アラン・プラテルのル・バレエ・C. ド・ラ B.の舞台で共演して意気投合。ピーピン・トムというコンテンポラリー・ダンスのカンパニーを立ち上げた。
 今回上演した『Le Sous Sol ル・ス・ソル/土の下』は、3部作”トリロジー”として『Le Jardin/ガーデン』『Le Salon/サロン』に続く作品。
 
 ソファや食卓が置かれた家族がくつろぐサロン。しかし、窓からは泥土が流れ込み堆く積もり、床も一面に埋まっていてまるで洪水の後のよう。家全体が土中に埋もれていて、上には地上も見えている。ここは第2作目が演じられたサロンなのだが、死後の世界だという。
 登場人物も同じ祖母と母と娘と夫、そして娘の愛人。しかし、みんな死人である。

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 母はオペラ歌手で時折、アリアを歌うが、家庭を取り仕切っている。祖母は最初は震えがきていて死んだばかりだったが、だんだんと若返り、最後は乳飲み子となり、母の乳を吸う。このように生命がめぐっている一方では、娘と夫と愛人は凄絶なまでに愛し合う。身体の一点だけを密着させた激しい動きが、延々と続けられるセックスを表していいる。生の世界では有限の行為が、死の世界では永遠に続く、という意が込められているのだという。
 積もった泥土の穴から出入りしたり、天使の羽根がロッカーにしまってあって、その鍵を母が管理している。クリスマス・プレゼントが贈られ、老人の客が集ったり、母が突如、欲望に狂ったり、といった家族のできごとが略脈無く断続して起る。前作との関連もあるのだろうか。
 動きは強烈だが、ダンスとして整えようという意思は感じられない。ただ激しく突き動かされ、痙攣しているかのよう。安部公房原作の映画『砂の女』に触発された、というが、閉鎖的な空間の中に人間の存在の根源を捉えようとした、という点では共通するもがあるのかも知れない。
(2009年2月6日 世田谷パブリックシアター)