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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.03.10]

完璧なザハーロワ&マトヴィエンコ
新国立劇場『ライモンダ』全幕

牧阿佐美 改訂振付・演出『ライモンダ』
新国立劇場バレエ団
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 新国立劇場バレエ団の『ライモンダ』は、04年に初演された。芸術監督の牧阿佐美が『ラ・バヤデール』に続いて、プティパの振付を改訂振付・演出している。

 スヴェトラーナ・ザハーロワがライモンダを、デニス・マトヴィエンコがジャン・ド・ブリエンヌを踊った初日を観た。アブデラクマンは森田健太郎だった。

 牧阿佐美は改訂に当たって、良く知られたプティパの振付にはあまり手を入れなかった、と記しているが、やはりとても19世紀の振付とは思えない。ダニロワやシュヴェツオフに師事した牧らしい感覚が息づいている振付である。

 クラシカルなフォーメーションを闊達なステップで描いていて、そこには近代的なスピリットが脈打っているのが感じられる。特に第3幕では、カップルを主体として構成し、グラズノフの音楽を華やかな群舞と組み合わせて見事な爽快感を創造している。

 もちろん、プティパの振付の妙でもあるが、単にヴィジュアルとして美しいだけではなく、観客がダンサーの躍動するムーヴメントの共振によって、シンフォニックな美しさを感得できるのは、舞台を創りあげる指揮官とダンサーが優れているからである。いくらプティパの振付を踊っていても・・・という舞台は世界中どこでも簡単に目にすることができるのだから。

 つまりは牧阿佐美芸術監督がバレエ・リュスやバランシンなどのダンスを深く理解した上で、プティパと取り組み、その感性によりダンサーたちを育ててきたことが、古典全幕バレエを今日の舞台に蘇らせる大きな要因となっている。 

 今さら言うまでもないが言わずにはいられないほど、ザハーロワの踊りは素晴らしかった。生命のリズムを刻むように、スタッカートに愛の勝利を完璧なステップで描いてみせた。まるで新国立劇場バレエ団のプリマのように、群舞との呼吸もぴったりと合っていた。

 彼女はキエフからマリインスキー、ボリショイと移籍してきたのだから、いっそ、新国立劇場バレエ団に入団したらどうだろう。そして牧阿佐美とともに古典全幕バレエのすべてを、東京の舞台に蘇らせてもらいたい、と思わず夢想してしまいました。

(2009年2月10日 新国立劇場 オペラ劇場)