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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.02.10]

スターダンサーズ・バレエ団の鈴木稔版『シンデレラ』

 昨年3月に初演された鈴木稔版の『シンデレラ』が、早くも再演された。恐らくは今後、クリスマス・シーズンに上演していく舞台として考えられているのであろう。
プロローグでは、王子の花嫁募集と告知されている辺りで、シンデレラが老婆の姿をした仙女を優しく気遣うところを王子が偶然、目撃する。
シンデレラの一家は、父親が超多忙なためにシンデレラの義母と心を通わせる暇がなく、問題はすべてお金で解決して済ましている。それをいいことに、ある いはそうしたストレスから、義母と義理の姉たちは、シンデレラをないがしろにする。純真なシンデレラは、台所の隅から時折現れるネズミたちと会話して孤独 を癒している。
花嫁選びの舞踏会に招待されたシンデレラたちに、新しいドレスが届けられみんな大はしゃぎ。ところが父親が新調してくれたシンデレラの真新しいドレスを、義母を始め義理の姉たちが切り裂き、暖炉で燃やしてしまう!
舞踏会に行けなくなったシンデレラをネズミたちが慰める。そして以前に優しく気遣った仙女が現れると、セットは一気に星空の中。妖精たちに付き添われて美しく着飾ったシンデレラは、カボチャの馬車に乗ってお城に向かう。

  第2幕では花嫁候補たちと、義母、義理の姉たち、王子、シンデレラとネズミが変身した友だち、それからお城の人々がかなり複雑なステップを踏み、入り乱れ ながらナラティヴな表現をうまく組み立てていく。王子とシンデレラのパ・ド・ドゥと魔法が解ける12時までの淀みないダンスの流れが、この作品のクライ マックス。プロコフィエフの音楽を解釈しつつ、見事にドラマティックなシーンを演出している。
行方を眩ましたシンデレラを王子たちが馬とスクリーンプロセスを使って、懸命に探す童話的でおもしろい表現や、父親と捜索隊が出会ってシンデレラの家が近いことを示すなど、細かい演出にも抜かりが無い。
  ラストシーンでは、義母や義理の姉たちが隠そうとするシンデレラを父親が王子に示す。すると隠しもっていたもう一方のガラスの靴が見つかって、王子の花 嫁、シンデレラが明らかになる。王子は、元のみすぼらしい身なりを恥ずかしがるシンデレラをいたわり、仙女が美しいドレスを提供しようとするが丁重に断 る。<ボロは着てても心は錦>なのである。
父親は、義母と義理の姉たちの仕打ちを叱るが、王子に対しては彼女たちの愚かな行いを詫び身を以て庇う。もちろん王子は許し、家族のわだかまりはは氷解して、めでたしめでたし。
鈴木稔版では、通常、四季の精として描かれる妖精をシンデレラの心の友のネズミのカップルに変えている。シンデレラの心根が愛らしく表現される優れたア イディアだと思うけれども、美しい心は美しい自然と相似形、といったメッセージは少し弱まったかも知れない。しかしとにかく、オーソドックスに振付家自身 が心を込めて創ったバレエだと思う。レパートリーとして今後も上演していってもらいたい。
(2009年1月18日 ゆうぽうとホール)