ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.01.13]

Noism08『NINA---物質化する生け贄(ver.black)』

 金森穣率いるNoism08、今回の上演は、Noismの2回目のシーズンの2005年秋に初演した『NINA---物質化する生け贄』を海外公演に持って行くために改訂したver.blackである。
海外公演にあたっては、白いリノリュウムや水銀灯が使えなかったり、劇場の舞台空間が大きく異なったりしたために余儀なくされた改訂でもあった。初演の 際に、舞台のフロア全面に敷いていた白いリノリュウムが使えなくなったことから、ヴァージョン・ブラック(ver.black)と呼んでいるそうだ。

  ベージュのレオタードを着けた女性ダンサーと黒いスーツの男性ダンサー。マネキンのような固まった女性ダンサーを、男性ダンサーが動かす。支配するものと 支配されるものの関係があるようにみえるが、その関係は常に変化し、男性ダンサーが横暴になったり、逆に男性ダンサーがマネキン化したりする。女性ダン サーの動きも逞しく超人的に見えたり、類人猿の動きを想起させるものになったり、人間性からはかけ離れた動きを見せ、男性や女性を越えた関係の変化も垣間 見える。
振付はダイナミックで、黄金色の照明のもと男性と女性の4組のペアが力感を漲らせて踊る長いシーケンスは圧巻だった。
男性と女性が絡み合うタイミングが非常に難しい振付が随所にあり、それがまた微妙なバランスを保ちながらフォーメーションを作る。女性ダンサーのシェイ プアップされたというか、鍛え上げられた身体はまさに超人のような強烈な筋力を湛えている。優れた身体性を持つことで世界的に知られたラ・ラ・ラ・ヒュー マン・ステップスのダンサーよりも、スピードはともかく安定感のある力強さを感じた。ほぼ完璧のダンサー陣と言っても良いのではないか。
海外公演で熱狂的な反響を呼んだということも充分に頷ける舞台である。
繊細で情感豊か、という舞台ではなくシンプルではあるが、カンパニーとして日々同様の訓練を受けながらじっくりと時間をかけて創った舞台でなければ、この水準を保つことは出来ないだろう。
発足当初はややひ弱さを感じないでもなかったNoismも5年を経て、インターナショナルなダンスの最前線で戦える戦士ともいうべき強力なダンサーたち が揃った。これでも金森穣と井関佐和子は踊っていないのだから、ダンサーとしても超一流の彼らが参加したら、さらに驚異的なメンバーが舞台に立つことにな る。
Noismは、じつにいいカンパニーに成長した。
(2008年12月17日 横浜赤レンガ倉庫1号館3階ホール)