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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2009.01.13]

篠原聖一バレエ・リサイタル新作『詩的なワルツ』『カルメン』

 篠原聖一バレエ・リサイタル DANCE for life の5回目として、『詩的なワルツ』と『カルメン』全2幕が初演された。
『詩的なワルツ』は、ロマンティックな「スペイン舞曲集」などで知られるエンリケ・グラナドスの音楽に振付けたもの。女性ダンサー3人と男性ダンサー2人 を、女性のトリオ、2組のペア、男性一人と女性トリオなど様々に組み合わせて、比較的シンプルなパを使って構成している。オープニングには、上手と下手か ら女性ダンサーを後ろ向きに登場させるなど意表を突いたアイデイアも使っていたが、全体的にはオーソドックスな振付だった。

『カルメン』全2幕は、カルメンが下村由理恵、ドン・ホセに佐々木大、スニーガは森田健太郎、エスカミリオには沖潮隆之というキャスティング。この 曲をバレエ化する場合は、ビゼーのオペラの音楽を再構成するか、シェチェドリンが編曲した『カルメン組曲』に沿って振付けるか、といことになる。篠原は、 ビゼーの有名なメロディを中心にして、場面に合わせた音響と組み合わせていた。そうするとどうしてもトータルな音楽性が弱まり、シーンごとに途切れた印象 を与えてしまうのはやむを得ないのかもしれない。
  下村のカルメンは、小柄ながら女性の強さを感じさせた。佐々木のホセはやや弱い感じもしたが、孤独感は出ていた。かなり濃厚なラブシーンもあったが、もう 少し愛の恍惚感も欲しかったような気もした。沖潮のエスカミリオと森田のスニーガは、それぞれのキャラクターを捉えていてなかなか良かった。
セットを自在に動かして巧みに『ロミオとジュリエット』の物語を語ってみせた前作ほどではないが、天幕の中のようなセットで、灯りの配置によってタバコ工場にしたり、タブラオにみせたりするセットは上手いと思った。
最も成功したのはラストシーンの演出だろう。カルメンをナイフで刺したホセが花の中に倒れると、その背後から純白の衣裳を着けたカルメンがするりと立ち 上がり、静かに背景に設えられた階段を昇って行く・・・。救いようのないホセとカルメンの悲劇を映画的な手法を使って、象徴的表現にまで昇華した見事なエ ンディングだった。
ホセとカルメンの出会いの場面に姿を現した運命の役は、篠原自身が踊ったが、キャスト表に役名はなく、カーテンコールでやっと判明する楽しいサプライズになっていた。
(2008年12月7日 青山劇場)

撮影:木本 忍