ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2008.12.10]

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』

 シュツットガルト・バレエが3年振りに来日し、クランコの名作『オネーギン』と、カラボスの解釈が独創的なハイデ版『眠れる森の美女』を上演した。このうち、ハイデによる初の振付作品で、日本では18年振りの上演となった『眠れる森の美女』を観た。
幕開け、青を基調とした優雅な服の貴族たちがバルコニーで囲まれた中庭で静止している泰西名画のようなシーンを目に焼き付けてから、突然、人々が動き始 めた。男性が演じるカラボスは黒マントをひらめかせてオーロラ姫の命名式に乗り込み、招かれなった怒りを猛々しく爆発させる。膝を開いて腰を深く落とし、 跳び跳ね、猛烈な勢いで駆け回った。式の後、すべてはカラボスの支配下にあるとでもいうように、巨大な黒い布が天井から下ろされた。カラボスがその端をま くると、人形で遊ぶ幼いオーロラと寄り添うリラの精が見えたが、布を操る姿からは、呪いが実践されるのを楽しみに待つ様子が伝わってきた。
物語はプティパの原典に基づくが、カラボス役に長年ハイデのパートナーを務めたクラガンを想定しただけに、カラボスの存在を際立たせていた。ただ、激情 にかられて暴れ回りはするが、拗ねてみたり、最後まで意地を張ったりと、どこか憎めない描き方である。歌舞伎の隈取りを取り入れたメイクや、荒っぽく振る 舞う一方で女形のような仕草を垣間見せたりする振付もユニークだった。そのカラボスを演じたジェイソン・レイリーは、攻撃的でパワフルな跳躍を見事にこな し、屈折した感情も滲ませていた。

 主役のダンサーが後回しになってしまったが、オーロラを演じたアリシア・アマトリアンは繊細さをたたえながら、快活なジャンプや柔らかな足さばき を見せたが、「ローズ・アダージョ」では片足でバランスを取るのに苦戦していた。フィリップ・バランキエヴィッチは確かなテクニックでノーブルなデジレ王 子を造形した。開脚も跳躍もスケール大きく優雅にこなし、着地もきれいに決めた。リラの精のミリアム・カセロヴァは、たおやかさと強さを織り交ぜて卒なく 踊った。結婚式の場で、宝石を相手にアリ・ババを踊ったアレクサンダー・ザイツェフのシャープなジャンプが冴えた。オーロラの4人の求婚者を、東西南北そ れぞれの国の王子として衣装で描き分け、オーロラが目覚めた時や結婚式にも登場させたことに、ハイデの細やかな心遣いが感じられた。
(2008年11月23日夜・東京文化会館)