ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.11.10]

東野祥子ソロダンス『VACUUM ZONE』

 舞台上空には、産廃物やゴミなどで作った巨大なオブジェが蜘蛛の糸に搦めとられたように浮かんでいる。この巨大オブジェに照明が当たるとゴールドやシルバー、ブルーなど、昆虫の翅を想わせるように光り輝き、H.R.ギーガーの創る怪獣にもみえる。
舞台のフロアーには、新聞紙の屑の山、上手にレコードプレイヤーと数枚のレコード、下手にはブラウン管にむき出しの機器が付いたTVが置かれている。美術はOLEO。
  鶏冠の赤い2羽の鶏を抱えて、赤い羽根のフード付きのトップを着けヒールを履いただけの東野が登場。鶏がクックと鳴いたりする。新聞紙と鶏と戯れたり、レ コードをかけるなどのパフォーマンスの後、ゴミ山から取り出した衣裳に着替えて踊る・・・轟音のノイズミュージックに代わると、背景の巨大オブジェも新聞 紙の山も、一気に舞台の床の大きな穴に吸い込まれていく。これはとても凄絶なシーンだった。
そしてブラックホールからは光りの柱が立ち昇り、キラキラと砂粒が輝く。なかなか美しい情景が観られた。
東野のダンスはユニーク。ギクギクした、身体に意識を映すことを拒否した動き、断片的だがその軌跡から反文明の次元が垣間見えた。独特の美意識で、現代 のファルスを描き、メタフィジックな表現を成功させている。轟音のノイズミュージックをしばしば使っているが、特に音に対して繊細な感覚を持つ舞踊家であ る。
(2008年10月24日 シアタートラム)