ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.08.11]

創立270周年を迎えたワガノワ・バレエ・アカデミーの来日公演

  サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーは、言うまでもなくニジンスキーやアンナ・パヴロワといったロシア・バレエの大スターの数々を輩出し ている。また、アグリッピーナ・ワガノワが集成した<ワガノワ・メソッド>は、バレエ教育にとって最も重要なシステムと考えられている。
また、ワガノワ・バレエ・アカデミーはテクニックの教育を行うのはもちろんだが、様々の分野にわたって、アーティストとしての教育を行っている。全人的 な教育により、感受性豊かな表現者としてのバレエダンサーを育成していくシステムが、伝統の中で構築されてきているために、優れたダンサーを世界に送り出 しているのである。
  今回の公演では、第一部が『ラ・シルフィード』『くるみ割り人形』『ラ・フィーイ・マル・ガルデ』(ロシアでは『無益な用心』)などのパ・ド・ドゥ、 『シェエラザード』のデュエット、『タリスマン』、『白鳥の湖』の小さな4羽の白鳥の踊り、『マルキタンカ』パ・ド・シスが踊られた。
特に印象に残ったのは、9年生のダリア・エルマコワとデニス・サプロンが踊った『シェエラザード』。1910年、バレエ・リュスでニジンスキーが金の奴 隷を、イダ・ルビンシュタインがハーレムのシャリアール王の愛妾ゾベイダを踊って、パリ・オペラ座の観客を「あっ」と言わしめた舞台。バクストの鮮烈でエ キゾティックな背景の中にエロティシズムを漂わせた踊りである。卒業生とはいえ、アカデミーの生徒に踊らせるのは大胆な試みと言っていいだろう。
『白鳥の湖』には、アカデミーの校長であり、マリインスキー・バレエの美貌のプリマだった、アルティナイ・アスィルムラートワとやはり、マリインスキーの プリンシパルとして活躍したコンスタンチン・ザクリンスキーの愛娘、アナスターシア・ザクリンスカヤが出演して愛らしい姿を披露していた。
また、日本人の9年生中家正博もアナスターシア・ニキーチナと『タリスマン』を踊り、健在ぶりをしました。

  第2部は『パキータ』。お馴染みの赤い帽子に制服を着た愛らしい初級生徒たちが、ポロネーズとマズルカを踊った。客席からも思わずため息が漏れるほど美し く、天使のダンスを観ているかのような安らかな気持ちになった。そのほかのソリストたちはほとんど、マリインスキー・バレエやミハイロフスキー・バレエに 入団することが決まっている、と聞いた。
爽やかなワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒たちが、やがてスターとして世界の檜舞台に羽ばたく日もそう遠くはない。
(2008年7月19日、新宿文化センター)