ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.07.10]
梅雨の季節は雨が多くて少しうっとうしいですね。でも、梅雨の合間に晴天が現れると、草木の成長するエネルギーが満ち満ちて、若葉がまばゆく光り輝き、清 々しい気持ちになります。そうした晴天の空の碧の中には、既に台風と太陽の季節の兆しが潜んでいるのかもしれません。はっきりは気づきませんけど。

『白鳥の湖』、K バレエ カンパニーの2組のキャストから

K バレエ カンパニーによる熊川哲也版の『白鳥の湖』、2組の主演キャストで観ることができた。
熊川版の『白鳥の湖』は、オデットとオディールを別々のダンサーが踊る演出と、同じダンサーが踊る2種類のヴァージョンがある。『白鳥の湖』は、 1877年に初演されて以来、カウントすることが不可能なくらい多種多様なヴァージョンが上演されている。それだけで、この古典バレエを代表する作品の魔 力ともいうべき生命力を感じることができるだろう。
熊川は、この作品自身がもつ力をダイナミックに捉えて、2つの演出ヴァージョンを併行して上演している。


今回の再演は同じダンサーが踊ったもの。オデットとオディールを松岡梨絵が踊り、ジークフリート王子を宮尾俊太郎が踊った舞台と、オデット、オディールを浅川紫織、ジークフリート王子を清水健太が踊るヴァージョンを観た。
松岡梨絵のオデットは、悲しさを秘めた踊りに楚々とした雰囲気があり、王女の気品を感じさせた。オディールは、知的な狡猾さとでもいえばいいのだろうか、気持ちの同じレベルから悲しみと媚態を表していて、表現のバランスがいいクールなダンサー、と思った。
宮尾俊太郎のジークフリートは、王子としての悠揚迫らざる雰囲気がでていたが、ただ、おとなしいというか、主役として舞台全体を力強く引っ張っていって ほしい、と感じさせてしまう面もあるのではないか。ともあれ松岡と宮尾は、立っているだけでも絵になる素敵なペアである。


清水健太のジークフリート王子は、動きは俊敏だし、オデットへの純粋な愛の気持ちも良く入っている。積極的な演技は好感がもてた。ジークフリートの気ま まな独身生活から自立して、王として国を治める責任の負担、家庭教師がみせる老いへの戸惑いなどもよく表現されていた。ただ、もう一歩、重い期待を背負っ て新しい世界へ進まなければならない、憂鬱な気持ちも表して欲しかったようにも思った。
浅川紫織のオデット、オディールは、彼女独特のフェミニンな感覚が魅力的で魅了された。熊川版のラストシーンに現れる、愛のために死ぬ高潔な悲劇をさらに磨きをかけて表現していってほしい。
特に、3幕、4幕の流れるように見事な迫力ある演出には、改めて感心させられた。
(2008年5月17日、松岡梨絵、宮尾俊太郎・東京文化会館/5月18日、6月18日、浅川紫織、清水健太・オーチャードホール)