ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.07.10]

新国立劇場バレエ団の牧阿佐美版『白鳥の湖』

新国立劇場バレエ団の牧阿佐美版『白鳥の湖』も観た。2006年11月に初演された時は、ディニス・マトヴィエンコがスヴェトラーナ・ザハロワと踊った が、今回はアンドレイ・ウヴァーロフがジークフリート王子に扮した。ウヴァーロフはモスクワ生まれで、バレエ学校からのボリショイ育ち。長身で正確なテク ニックによる大きな表現が得意の、生粋のボリショイ・ダンサーである。

ザハロワは言うまでもないが完璧。『白鳥の湖』は、このバレリーナが踊ることを前提として振付けられた作品ではないか、とさえ思わせる見事な身体が音楽 を奏でる。目で見る美しさと耳で聴く美しさが脳内で完全に一致し、肌が粟立ち、首のあたりが涼しくなる。感極まったかのような”ブラボー!”が出た。(プ ロモーターにおもねる耳障りなブラボーは自粛すべきだが、こうした涼感のある歎声は、じつに気持ちがいい。)

第3幕のザハロワのグラン・フェッテも圧巻だった。アナニアシヴィリのスピード感豊かなフェッテにも目を見晴らされたが、ザハロワのテクニックにはスピード感とともにクラシカルな雰囲気があって美しい。
高いリフトも決まったふたりの見事な踊りを観ていて、ボリショイ劇場の観客席に座っているかの様な錯覚を一瞬、覚えた。だが、コール・ドと主役のアンサ ンブルは、彼の劇場とはまた異なった味わいを秘めている。さらに、牧阿佐美版は、架空の国の物語という設定の中に、統一感のあるひとつの美的宇宙を構成し ていて説得力がある。ダンスシーンの配分もバランスよく非常に整えられていた。

また、3幕のディヴェルティスマンに「ルースカヤ」が復活されていて、アンナ・パヴロワがこのダンスをよく踊ったということも心に浮かび、古き良きロシアの雰囲気を堪能することができた。
(2008年6月24日、新国立劇場 オペラ劇場)

ザハロワ川村真樹