ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.07.10]

谷桃子バレエ団の創作小ホール公演

谷桃子バレエ団の団員たちが意欲的に作品創りに取り組む、クリエイティヴ・パフォーマンスの6回目の公演では、四つの小品が踊られた。
日原永美子振付の『Pas de Quatre』は、19世紀にペローがプーニの音楽により、4人の最高の舞姫たちに振付けたダンスを、21世紀に移してみよう、という試み。かの舞台で は、舞姫たちのプライドがかかったヴァリエーションの順番が大いに難航したが、年齢順と決まると今度は逆に譲り合ったなどというエピソードも残されてい る。
今回の舞台は、最初のヴァリエーション(ルシール・グラン)は伊藤きよ子、次(カルロッタ・グリジ)は正木智子、その次(ファニー・チェリート)は上島 里江、そして最後(マリー・タリオーニ)は佐々木和葉だった。もちろん、初演からは163年の月日が流れているから、舞姫たちの心理も大きく違うは ず・・・と思ったが、意外に優れた女性同士の競う心は不変なのかもしれない。つまり、心は変わらなくても、表現は変わったわ、というバレエになる。競い合 いから調和へ、現代の舞姫たちの様々な動きがおもしろかった。ただ、163年前より、今回のほうが楽屋は和気あいあいだったにちがいない。

『パ・ド・カトル』『パ・ド・カトル』

赤木はるか振付『My Pet Goat』は、観客席のあちらこちらから10名のダンサーが登場した。全員裸足、色とりどりのワンピース。床を引きずり回したり、退場しようとすると妨害 したり、と様々な乱雑な動きが次第に抽象化された動きとなり、「ぼくの居場所はどこだ!」という一言だけの声が入り、リズミカルな動きが繰り広げられた。
存在への呼びかけを動きの中で確かめるようなダンスだった。ラストは、舞台奥の扉が開き、強烈な逆光の中にダンサー一人一人が消えていった。

『MyPetGoat』『MyPetGoat』

高部尚子振付の『ライトモチーフ』は、上手手前に紫色のアザミの花のようなちょっとイガイガのオブジェがあり、奥には大きな額のフレームが置かれそこから数段の階段があり、下に男が一人倒れている。心象風景を想わせるセット。
ダンサーは永橋あゆみと斉藤拓で、女性が男性に関わっていく動きが続く。結局、男は特設のプロセニアムの中に落ちて消える。女性は男性とともに得ることのできなかったオブジェを捨て、冒頭に男性が倒れていたところに同じ状態になった。
この作品は、観客は紫のオブジェが象徴するものをどう察知するか、ということになるのだろうか。音楽はジョン・ケージ。すべてにまとまりのある無駄のない作品だった。

『ライトモチーフ』『ライトモチーフ』

岩上純振付の『KIZUNA』は、5組のペアによるダンス。全員ダークグリーンの衣裳で、女性はワンピース、男性はジャケットとパンツで踊った。
「CONTACT」という第1章では、全員の踊りで始まり、それぞれのペアが組んだ踊りとなる。「PASSION」「DISTANCE」 「OBSTACLE」「RAPPORT」「RECONCILATION」という関係を表すテーマの表情を捉えて、それぞれのペアがパ・ド・ドゥで踊る。一 定のテンポを保ちながら動きに変化をつけ、ユーモラスだったり、情熱的だったり・・・あまりテーマを強調しすぎることなく、ダンスの楽しさが心地よく感じ られた。岩上純の振付には、ダンサーを舞台に上げただけで、観客に思わず期待を抱かせるという得難い資質がある、と思う。ぜひ、この資質を生かしたドラマ ティックなダンスを期待したい。
谷バレエ団の「クリエイティヴ・パフォーマンス」は、すべて観ているわけではないが、次第に作品創りが洗練されてきているように見える。作品を創ること で、また、次の創作への意欲も膨らむ。こうした団員による創作の試みは、意外に行われているところは少くないのではないだろうか。ぜひぜひ、発展してもら いたいと思う。
(2008年6月15日、草月ホール)

『KIZUNA』『KIZUNA』