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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2008.06.10]

東京バレエ団<モーリス・ベジャール追悼特別公演>

吉岡、中島
  “バレエの革命児”といわれたモーリス・ベジャールと長年にわたって親交を結び、その作品を、委嘱作を含めていくつもレパートリーに持つ東京バレエ団が、昨年11月に没した巨匠を偲ぶ追悼特別公演として、代表作3作を上演した。その2日目を観た。
最初は1980年代の『ギリシャの踊り』。ブルーの壁をバックに、潮騒の音に誘われるようにダンサーたちが膝を曲げて腰を落とし、伸び上がりながら前進 する様が、押し寄せる波のようで美しい。背景は黒い幕で閉じられるが、民族色豊かな心地よい音楽にのせて様々な踊りが展開された。いかにも若々しい高橋竜 太と小笠原亮のデュオ、吉岡美佳と平野玲のペアによる端正な踊り、身体の美しさを活かして格調高く舞った上野水香と互角に応じた高岸直樹のパ・ド・ドゥ、 生気あふれる溌剌とした中島周のソロなど、それぞれに魅力的だった。潮騒のフィナーレで再びブルーのバックが現れるところなど、演出も心憎い。

『火の鳥』(1970年)は、ストラヴィンスキーの同名の曲を用いているが、「火の鳥」と名乗るパルチザンのグループに着想を得たもの。彼らを率いる火 の鳥が戦いに倒れると、不死鳥が現れて火の鳥を生き返らせ、闘士たちも火の鳥と化し、とも戦いに臨むという内容。労働服のパルチザンが拳を振り上げ、円陣 を組み、機敏に行動する様が、整然とした構成と振りで表された。火の鳥の木村和夫は力強い演技で、緊迫感を漂わせたのに対し、フェニックスの後藤晴雄は包 み込むような優しさで火の鳥を蘇らせた。

吉岡、中島
 最後は初期の傑作『春の祭典』(1959年)。交尾する発情期の鹿に触発されたそうで、こちらも音楽はストラヴィンスキー。冬眠から目覚め、本能に突き 動かされるように徐々に体を揺らしていく冒頭の男性群舞は、何度見ても刺激的。後半の生々しさを抑えた女性群舞の冒頭と対照的に映る。
生贄に選ばれた長瀬直義の追い詰められた表情と井脇幸江の憂いを帯びた姿が印象に残る。生きるための儀式は、野性を燃焼させるようなダンスとともにクラ イマックスに達したのである。息詰まる緊迫感をたたえていたとはいえ、ダンサーが若返ったせいだろうか、作品特有のドロドロしたものが薄れ、動きがきれい になっているようにも感じた。とはいえ、それぞれに独創的な3作品を通じて、改めてベジャールの偉大さを思った。
(2008年5月11日、東京文化会館)