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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.05.12]

酒井はなと山本隆之が踊った石井潤の『カルメン』

『カルメン』
  新国立劇場バレエ団が2005年3月に初演した、石井潤振付の『カルメン』を再演した。
ビゼーの著名なオペラに基づいて創られたバレエ『カルメン』は、ローラン・プティやアルベルト・アロンソが振付けた舞台が良く知られていて、各国のバレ エ団のレパートリーとなっている。プティはオペラの音楽を選択して使用しているが、アロンソはシェチェドリンが構成した「カルメン組曲」によって振付けて いる。1992年にマッツ・エクがクルベリー・バレエ団に振付けた『カルメン』も同様にシェチェドリンの曲を使っている。

石井潤版の『カルメン』は、フォテーン、ヌレエフなどの公演で音楽監督を勤めたロビン・パーカーが、オペラ『カルメン』の曲やビゼーの他の作品(『アルルの女』や『真珠採り』)の曲を選んで、全2幕の舞台に構成している。
朝倉摂の装置は、可動式の三本の三角形の立柱を中心として幾何学的な形を変化させて、ドラマティックな状況と登場人物の心理を浮かび上がらせようとした、モダンなもの。三角形がこのドラマの人間関係を象徴しているのであろう。

物語は、一度一緒に入ったらどちらかが生きて出る事が出来ない闘牛場に踏み込んだような、カルメンとドン・ホセの激しい宿命的な恋を描く。第1幕のクラ イマックスは、カルメンと上官を刺し殺したホセが荒々しく愛し合うシーン。酒井はなが太腿も露に熱演した。第2幕では、エスカミーリオとホセの決闘の後、 運命の悲劇を告げるダンスがたっぷりと踊られる。
振付は、大胆だが優れたフォーメーションを随所に使い、テーブルや椅子を使った凄絶な官能シーンが見事な、力強いダンスで描かれていて関心した。山本も全身を込めてホセの人生の軌跡を踊って力量を見せた。
ただドラマの構成としては、2幕の山の中のキャンプに、ミカエラやエスカミーリオが登場するのはちょっと唐突な気がした。またホセの幻想とカルメンの幻想がそれぞれ描かれる点などには、少々説明的な印象も受けた。
(2008年3月27日、新国立劇場 中劇場)