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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2008.05.12]

東京バレエ団『ドナウの娘』

第15回神奈川国際芸術フェスティバルの一環として、東京バレエ団が『ドナウの娘』を再演した。伝説の舞姫、マリ・タリオーニのため、父フィリッポ・タ リオーニが振付けたロマンティック・バレエの香り高い作品だが、1978年にピエール・ラコットが復元・蘇演するまで長いこと埋もれていた。今回は、 2006年の日本初演に続く再演である。

ドナウ川の岸辺で見つけられたフルール・デ・シャン(「野の花」の意味)と男爵の従者ルドルフの愛を、彼女を花嫁に望む男爵をからめて描いた作品。自分 たちの仲を告げたルドルフが反逆罪でとらわれると、彼女は絶望して川に身を投げ、ルドルフも後を追う。ルドルフが水の精の中から恋人を見つけ出したことに より、二人はドナウの女王の許しを得て地上に帰る。現実世界と川底の幻想世界の対置や水の精の登場など、いかにもロマンティック・バレエらしい展開だが、 『ジゼル』と似通った場面が垣間見られた。作曲者は『ジゼル』と同じアダンだが、音楽の完成度は『ジゼル』に及ばなかったようだ。

『ドナウの娘』『ドナウの娘』

フルール・デ・シャン役の斎藤友佳理は、やわらかな足さばき、ゆらめくような腕の動きで、しっとりとした情感を漂わす。男爵の花嫁選びのシーンでは、ヨ タヨタ歩き、気がふれた真似をする一方、陰でルドルフと素早く気持ちを確かめ合うといった演技も自然さを増した。ルドルフの木村和夫は軽やかなジャンプで 登場し、恋に一本気な青年を好演。二人のパ・ド・ドゥは、冒頭の愛を確かめるような楽しげなやりとり、ルドルフが夢の中で彼女の幻と踊る静かなデュオ、川 底での魂を浄化するような踊りと、対比が生きていた。

男爵役の中島周は跳躍などに冴えた技を見せたが、若々しさが先に立ち、重々しさは今一つ。男爵とパ・ド・サンクを踊った4人は粒ぞろいだったが、最初と 最後のソロを踊った高村順子と小出領子が際立った。ドナウの女王の井脇幸江は、母のような慈しみで二人を包み込んだ。村やお城での群舞の配置や構成には様 々な趣向がうかがえたが、水の精の群舞には、『ジゼル』と比べるわけではないが、物足りなさを覚えた。ただ、再演だけに、踊り手たちは役柄を深め、アンサ ンブルも練れていた。
(2008年4月29日、神奈川県民ホール)

『ドナウの娘』
『ドナウの娘』