ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2008.05.12]

マドモアゼル・シネマ『ざわめきの4月』

マドモアゼル・シネマは、1993年、セッションハウスのレジデンス・カンパニーとして伊藤直子を芸術監督に創設された女性ダンサーのみによるカンパ ニー。伊藤は旺盛な実験精神を発揮して、ダンサーの個性を生かした、舞台と客席の仕切りがない小空間ならではの演出を模索し、世の中や人の心の微妙な側面 を独特のユーモアを交えて提示してきた。2002年には初の海外公演を行って活躍の場を広げたが、今年6月にはルーマニアの「シビウ国際演劇祭」に参加す るという。そんな意気軒高なカンパニーが、初めて男性ダンサーと共演した。題して『ざわめきの4月』。(マドモアゼル・シネマ)2として、「異」をキー ワードに団員が選んだパートナーと“同伴出演”したものだ。6人の団員中、5人が男性を招いたことで、いつもと、ちょっと異なるステージが展開された。

〈男と女の間には、深くて暗い川がある~~〉で始まる野坂昭之の「黒の舟歌」が流れる中、13人のダンサーが登場。川の手前と向こう側に分かれたように 呼応してみせたり、合流したり分岐したり、全員で環となり渦を巻いたり。留まるところを知らぬ流れのように、絶えず変化し続ける男と女の個性的な関係が、 エピソードを脈絡なく連ねるように次々に繰り広げられた。メジャーを口にくわえて引っ張りあう女と男、口にくわえたミカンを落とさないように危うい振りも みせて交感しあう女と男、青いハート型の風船を抱えて踊る男と女、手紙を書く女、水の入ったバケツを両手にさげる男……。様々な光景を旅した後、一群と なったダンサーたちの上に桜の花びらが降り注ぎ、波の音が高まって終わった。踊りのスタイルや強度、パートナーとの関係性の濃淡は多様だった。男と女のあ り方に対する考察は、深刻すぎることはなく、かといって淡泊すぎもせず、程良い刺激を含んでいた。マドモアゼル・シネマの特質といえるだろう。なお、男性 とのコラボレーションは初めてとは思えないほど、彼らはマドモアゼル・シネマに溶け込んでいた。これは、女性優位で創作に取り組んだからだろうか。
(2008年4月12日、セッションハウス)

『ざわめきの4月』『ざわめきの4月』
『ざわめきの4月』『ざわめきの4月』