ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.02.11]

新国立劇場オペラ・バレエ、ニューイヤー オペラパレス ガラ

『アンド・ワルツ』
  08年の新春、ウィーンのニューイヤー・コンサートの「ラデツキー行進曲」のリズムも抜けきらないうちに、新国立劇場がニューイヤー オペラパレス ガラを開催した。
第1部はバレエ。牧阿佐美芸術監督の振付、ラベル曲の『アンド・ワルツ』。ヨハン・シュトラウスの『チクタクポルカ』の演奏の後に、ローラン・プティの『こうもり』が上演されたが、これもヨハン・シュトラウスの音楽。

『アンド・ワルツ』は、牧が1996年に振付けたものを新国立劇場用のヴァージョンに改訂している。この曲は、2月中旬にワシントンのケネディ・センターで行われる「ジャパン!カルチャー+ハイパーカルチャー」で上演される。
幕が開くと、下手手前から上手奥の対角線上に光りのラインが描かれていて、その上にダンサーが登場してくる。7曲のワルツとエピローグのワルツで構成された舞台である。
衣裳はルイザ・スピナテッリで、色彩の輝きを抑え目にしたパステル調のシックなカラーを組み合わせていて、女性はワンピース、男性は総タイツ。カップル が中心となってリードして行く振付だが、舞台をはけるダンサーは、次に登場するダンサーとアイコンタクトを交わす。そして今、舞台に描いたラインの流れを 受け渡す、「アンド・ワルツ」というわけだ。女性らしい柔らかいパがアクセントとなって、同じ筆遣いの繊細なワルツのラインが様々に紡がれ、ラストには静 かな佇まい日本庭園の情景のような美しい刺繍が編み上がった。
そしてその糸が一本づつほぐされていくように、ダンサーたちが舞台を去って、アイコンタクトを交わしながら慎重に編み上げられた、複雑で繊細な美が一瞬のうちに消える。その儚さが、また美しさを一段と高い境地へと昇華させるのである。
この素晴らしい、日本人の細やかな感受性でしか描くことのできないバレエの美しさが、彼の地で深く理解されることを祈りたい。

  続いてローラン・プティ振付の『こうもり』から、グラン・カフェのシーンが上演された。真忠久美子がベラ、山本隆之がヨハン、吉本泰久がウルリックに扮し た。軽快なギャルソンの踊りや、全身が踊りだすようなフレンチ・カンカンなどが踊られ、新国立劇場バレエ団のダンサーたちのレベルの高さに感心した。
しかし一方、こうしたショー的な要素のあるシーンでは、控え目な品の良さだけではなく、思い切った表現にもどんどん挑戦してもらいたい、とも思った。
(1月5日、新国立劇場 オペラ劇場)