ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2008.02.11]

ニブロール10周年記念新作公演『ロミオ OR ジュリエット』

『ロミオ OR ジュリエット』は、あらゆる境界線を見極める作品で、関心をそそった表題は、ひとつの象徴として選んだということらしい。
確かに、境界線、ボーダーラインという視点から、現在の地球を捉えたらまさに複雑怪奇に入り組んだ境界線だらけ。地球は境界線が無限に集まって丸くなっ てしまった、といいたくなるくらい。くっきり表記されたものから、限りないグラデーション、とりとめなく動くファジーなもの、日常的なことから見ても境界 線がはっきりしているもののほうが遥かに少ない。
天から舞台の前後に吊るされた何枚かの紗幕。ダンサーの間を仕切ることもあるし、天にあげられてフリーな空間となることもある。森羅万象に関わる高橋啓 祐の映像が紗幕はもちろん、床や背後、左右の壁に全面に映し出される。矢内原美邦の振付は、一見八方破れのような生きることを拒否するかのような激しい動 きを、随所に挿入しがながら全体の大きな流れを構成している。
また例えば、一人一人のダンサーたちが自分の物語をしゃべり始めると、音声や映像によって中断してコラージュする。すると、「ここ!」とダンサーが叫ん だ時、それはどこなのか、一人は高校時代のルーズソックスを履く時であり、もう一人は目の前に突然現れた顔であったり、境界線が無限に入り乱れる地球上の 「今のここ」が実感されるシーンだった。
生物の種族にも境界線をみると、それはもう凄絶ともいえるような映像の氾濫となって投影され、絶滅危惧種から猫やペンギンなどの様々な種の並列が地球の現在を感じさせる。そして最後に水の映像が命の姿を映しているかのようで圧巻だった。
(1月20日、世田谷パブリックシアター)