ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

From Tokyo <東京>: 最新の記事

From Tokyo <東京>: 月別アーカイブ

関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.12.10]
2007年もいよいよおしまい。みなみなさまの07年はいかがでしたでしょうか。 素晴らしいことがあった方、今イチだった方、今サンだった方、08年は、さらにさらに良い年でありますように!

愛の情感があふれる格調高い悲劇となった『椿姫』

 新国立劇場開場10周年シーズンのオープニングの舞台となった、全幕バレエ『椿姫』は、牧阿佐美の渾身の振付・演出であった。
周知のように牧阿佐美版の『椿姫』は、有名なヴェルディのオペラからではなく、原作者デュマと同時代に生きた同じフランス人作曲家エクトール・ベルリ オーズの音楽を使って制作された。東京フィルハーモニー交響楽団を指揮したエルマノ・フローリオが、ベルリーオーズの『幻想交響曲』やオペラなどの音楽を 情景的、情趣的に精緻に選んで編曲し構成している。
こうして幻想的でロマンティックでいささか耽美的な、情感が豊かに流れる音楽と、品の良く組み立てられた振付と主役の見事な踊り、繊細で美しい美術、衣 裳、ソリスト、コール・ドたちの正確なダンスなどが、じつにレベルの高い舞台を創った。近年、特筆すべき日本のバレエの成功作、といえるのではないだろう か。

さらに、アルマンの父親を息子を律する社会的な厳しい存在としてではなく、父性を強調した息子の愛を見守る者として描いたことも大きな成功の要因だろ う。もちろん具体的に表現されているわけではないが、マルグリットとアルマンの父親の間には、この愛の運命に対する共通の悲しい気持が流れている。それが この悲劇をいっそう深いものとして観客に訴えかける。そしてまたベルリオーズの音楽の曲調が、その悲劇を歌うのに誠にふさわしいものであった。

ザハロワは、作品全体を通してマルグリットの人物像を浮かび上がらせており、こころに残る存在感を味合わせてくれた。マトヴィエンコも熱演して、アルマンの心情を余すところ無く気持ちを込めて表現していた。

牧阿佐美芸術監督による新国立劇場バレエ団の大きな成果として、近いうちに再演することを切望したい。
(11月4日、新国立劇場 オペラ劇場)