ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.12.10]

バレエフェスティバル、下村由理恵の『チャイコフスキー組曲』


第46回バレエフェスティバル公演が行われ、石井竜一振付『シャコンヌ』、佐藤宏振付『レ・フェドレール』、下村由理恵振付『チャイコフスキー組曲』の3演目が上演されたが、誠に残念ながら時間の都合上、最後に上演された舞台しか観ることができなかった。
『チャイコフスキ-組曲』は、まず緞帳に、白樺の林の中のような木漏れ日の光りが射す。幕が開くと、ドレープのかかった白い薄い布が、天井から数本垂れ下 がっている。やはり、木漏れ日のような光りが、憂いているかのようにフロアーにうずくまった男に優しく投げ掛けられている。半透明のヴェールを被ったふた りバレリーナがセリから登場してくる。
ここでは、チャイコフスキーとサンクトペテルブルクの自然が触れ合い調和するような、ダンスが繰り広げられる。
やがて、ドレープのかかった白い布に代わってシャンデリアが現れる。このパートでは、チャイコフスキーの都会的な雰囲気の華やかな曲、ロマンティックな 曲、厳かな曲が踊られ、テンポの速い出入りが多く群舞が次々と変化する。全体に客席の隅々にまで、美しく豊かな情感が流れ、終曲では再び、木漏れ日の下の 瞑想へと帰っていく。
快適なテンポと爽やかな流れで、チャイコフスキーの世界を楽しませてくれた舞台だったが、どちらかというと、群舞が中心でソロやパ・ド・ドゥは少なかっ た。また、フォーメーションもよく整えられて見事に構成されていたが、思い切った特色も欲しかった気がしないでもない。しかし、シンフォニックな優しさを 味わわせてくれた好感の持てる舞台である。こうした傾向の作品が新しく創られる機会はあまり多くないので、これからもぜひ発展させて欲しい、と思った。
(11月10日、メルパルクホール)