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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.12.10]

東京小牧バレエ団『白鳥の湖』

  東京小牧バレエ団が、昨年亡くなった小牧正英の追悼公演として『白鳥の湖』を上演した。『白鳥の湖』は、ロシア・バレエ団のダンサーとして活躍した小牧 が、帰国した戦後間もない1946年に、自身の演出・振り付けにより、日本のバレエ界の力を結集して日本初演した演目であり、これが日本のバレエ界の出発 点になったとも言われている。その後、バレエ界のレベルの向上に合わせて改訂を重ねたそうだが、今回は、かつて小牧バレエ団で主要な役を踊った佐々保樹に 演出・振り付けを任せての上演だった。

観てまず感じたのは、マイムの比重が大きかったこと。ジーグフリード王子と友人ベンノや王妃、オデットとのとやりとりだけでなく、最終第4幕でロットバル トの策略の成功を伝達する白鳥たちに至るまで、実に細かに挿入され、会話のように交わされていた。また、ベンノの役割も重視されていた。冒頭で佇むベンノ は、ほかの王子の友人たちとは別格にしても、王子と思わせるような衣装で、威厳も感じさせた。しかも、第2幕で通常は王子とオデットが踊るグラン・アダジ オに、ベンノも加わったのだ。ただ、ここではあくまで脇役的で、オデットをサポートしたり、リフトしたりするだけ。恐らく当時は、王子役のダンサーの負担 を軽減し、二人を引き立てるような存在が必要だったのだろう。

舞踏会の場では、余興のダンサーたち、王子と王妃、貴婦人たちが入場(王妃が貴婦人らに交じってステップを踏む場面もあった)。王子が花嫁候補と儀礼的に 踊った後、ロットバルトとオディールが登場し、各国の民族舞踊が披露され、王子とオディールのグラン・パ・ド・ドゥになり、惑わされた王子がオディールに 永遠の愛を誓うという流れ。民族舞踊の扱いだが、女性陣によるロシアの踊りと男女による賑やかなチャルダスを除き、ナポリターナ、マヅルカ、エスパニョラ は一組の男女により踊られた。総じて控え目な作舞に当時がしのばれた。対照的に、王子とオディールの華麗なデュオが映えた。結末は、オデットを追って身を 投げた王子の愛により悪魔は滅び、二人は永遠の幸福を得るというもの。

オデット/オディールを踊ったのは渡部美咲。折れそうなほど細く華奢な脚に見えたが、しっかりしたテクニックの持ち主で、はかなげで清純なオデットと妖し い魅力をふりまくオディールを巧みに演じ分けた。王子のアルタンフヤグ・ドゥガラーはおとなしすぎる印象を受けたが、幕を追うごとに力量を発揮し、鮮やか なピルエットや力強い跳躍をみせた。ロットバルトの夏山周久は、ジャンプ力は今一つだったが、王子相手のマイムに説得力があった。ベンノやパ・ド・トロワ などを踊ったラグワスレン・オトゴンニャムは安定した技をみせた。ところで、今回の舞台は、マーゴット・フォンテインが客演した1959年頃の小牧版が ベースになっていると聞く。歴史的意義もある公演なのだから、佐々が小牧版をどう継承し、どう手を加えたかなど、プログラムに解説が欲しかったと思う。
(11月16日、渋谷C.C.Lemonホール)