ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.11.12]

勅使川原三郎が新作『消息----Substance』を上演

 勅使川原三郎の新作『消息----Substance』が、新国立劇場の開場10周年記念フェスティバル公演の一環として上演された。
勅使川原自身が振付、美術、照明、音響、衣裳を担当し、彼を中心に宮田佳、佐東利穂子ほかの計6名が踊った。
暗い舞台奥の壁面に、いくつかのカバーを付けた白熱灯がつるされ、閉ざされた光りを落としている。真っ黒な衣裳のダンサーが引き攣ったような奇妙な動きを見せる。まるで暗黒の死の国の情景を思わせる。
舞台の両サイドには、メタリックに光る長いパイプが組み合わされたオブジェが置かれている。これは現実の街をデフォルメしたオブジェにも感じられる。

  死の国からダンサーが姿を現して踊る。肌の色そのままの女性ダンサーが身体をテーブルに曝す。真っ逆さまに宙吊りされた男の頭が、時計の振り子のように ゆっくりと振れる。突然、勅使川原が激しく踊る。死の国と現実を往来する男と女。安息や苦悩など生きることの現象が交錯して連鎖し、ソロあるいはデュオで つぎつぎと踊られていく。
 生命の営為が二元的展開によって、ダイナミックに表現されている。

いつものように勅使川原作品は、舞台のヴィジュアルが細部にわたって細かく構築されていて優れて美しい。舞台の光りの明暗、濃淡、方向などが繊細に整え られていて、小宇宙を表しているように見事に構成され、ダンサーからセットの細部に至るまで、それぞれがふさわしい存在感を持って配置されている。サウン ドもまるで、ダンスを感じながら目でも聴いていると錯覚しかねない鮮やかなものであった。ただ、身体を突き動かすようなサウンドとの強烈な交流は、今回の 舞台にはなかった。どちらかといえば、消えることによってあるいは消すことで存在を浮かび上がらそうとする試み、といえるのではないだろうか。

(10月5日、新国立劇場 小劇場)