ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.10.10]

黒沢&木佐貫による50年に一度のデュオダンス『約束の船』

日本のコンテンポラリー・ダンスを代表する二人の女性舞踊家、黒沢美香と木佐貫邦子が、50年に一度のデュオダンス『約束の船』を踊った。
公演の際に配布されたプログラムには、かなり詳細な二人の活動歴がプリントされていた。それによると1975年にコンクールの楽屋で初対面して以来、時 折クロスする程度で、本格的なコラボレーションの経験はない。しかし、二人とも「50歳になったら一緒に踊る」という約束を心得ていたのだそうだ。
そして50歳を迎え、ダンス人生を振り返る節目に<約束の船>に乗ることになったのだが、ともに病を得ていたこともそこに記されていた。

奥に大きな赤いドアが据えられ、上手に出入り口がある簡素な舞台。黒沢が登場して下手手前で踊り、中央の後方に下がると木佐貫が同じ動きで姿を現し、同じ場所で簡単なソロを踊る。こうした動きのヴァリエーションがしばらく続く。
ほとんど無音だが、時折り電話の呼び出し音や海鳥や蝉の鳴き声などの弱い現実音や、ピアノ曲などが流れた。
黒沢の日常性の中に現れる動きをデフォルメして現実を感じさせる踊りと、木佐貫の幻想そのものをイメージしているかのような踊りが、異なったラインを描いていて、不思議な、いささか物悲しげな雰囲気が舞台に漂った。
そして最後は、「乙女の祈り」をアレンジした曲とともに天上にスモークがたかれ、終幕を迎えた。

どちらかといえば、ともにソロ・ダンサーとしての活動が多く、それぞれのダンスのスタイルを持っている。それが50歳という節目でクロスして、創ったダンスは、今後の活動にどのように反映していくのだろうか、興味深いものがある。
   
(8月31日、シアタートラム)