ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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佐々木 三重子 text by Mieko Sasaki 
[2007.10.10]

室伏鴻×黒田育世『ミミ』

 
 室伏鴻と黒田育世という異色の二人による初の共演が、室伏の企画するExperimental Body シリーズvol.Vとして行われた。片や“孤高の舞踏家、”片や鮮烈な踊りで知られる気鋭のダンサー。親子ほどの歳の差があり、身体表現の方法も異なる二 人だけに、激しく個性をぶつけ合うのか、それとも互いに寄り添うのか。このシリーズでは、もっぱら若手男性ダンサーを相手に踊る室伏をみてきただけに、予 測はつかなかった。

ワンピース姿の黒田は暗がりの中、左手のソファに這って近づき、背をのせて脚を上げ、また立って頭を痙攣させるように振った。黒の上着とズボン姿の室伏 は、頭を振りながらゆったりと進み出てきた。室伏は黒田に服を脱がされた。鍛えられた身体を覆う皮膚は、舞踏家にとっての衣装と感じさせた。裸の体を左右 に揺らす室伏の周りを、黒田は駆け回る。室伏は体を痙攣させ、頭や背を床に打ちつけるように音を立てて倒れ込む、あの得意の動作を繰り返す。それぞれの表 現が交錯した後、ストロボライトが点滅して暗転。後方に膝をかかえて座わった二人は、立ち上がって腕を組んで前進し、室伏が黒田を抱えて踊るなど、互いの 個性を絡み合わせた。

室伏にとってミミは水の女のイメージだそうだが、舞台と直接結びついてはいない。この後も、二人の独自性の主張と個性の交感が繰り返された。ソファに腰 掛け、体を揺らしながら片足を振り上げる動作を執拗に反復する黒田の足元に室伏が座り込んだり、柱の陰などに退いた黒田に室伏が優しく「カモン」と呼びか け、舞台に招き入れたり。室伏がガムテープでやおら自分の頭をぐるぐる巻きにし、すぐに乱暴にこれを解くといった一幕もあった。白い上着とズボンの室伏 が、「カモン……出てきて」と頼むようにうながすと、黒田がそれまでと違って室伏の後ろから現われ、後ろから抱きついた。そんな二人のやりとりに、若い黒 田を慈しむ室伏の温かさや、黒田が室伏に対して抱く敬意が伝わってきて、ほほ笑ましく感じられた。
1時間半の舞台には、室伏の新たな精気を得た身体性と、黒田の密度を増した精神性が息づいていた。
 

(9月15日昼、赤坂Red Theater)