ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.09.10]

牧阿佐美バレヱ団が『ア ビアント』を改訂新制作により再演

2幕4場「白い部屋」
吉岡まな美、ロバート・テューズリー、
田中祐子
 昨年3月、高円宮殿下追悼のために初演された『ア ビアント』が、演出、展開、音楽などに改訂を施し、会場を新国立劇場 オペラ劇場に移し、指揮に大友直人、演奏に新日本フィルハーモニー交響楽団を迎えて再演された。
このバレエは、著名な日本人が主要なスタッフを務め、久しぶりのオリジナル全幕バレエの新作として世に問われた舞台である。
  原作は小説家の島田雅彦が、現世の愛を悠久の時間の中に描いたもの。主人公のリヤム(ロバート・テューズリー)とカナヤ(田中祐子)の愛と死のドラマが、 現世と冥界、森や砂漠、荒廃した都市などを巡って展開され、ついにはひとつの魂が帰結に至る、という物語である。ここでは、自然と人間の魂の調和に対し て、人間の利己的な攻撃性や社会的結びつきの荒廃が批判されている。

美術のルイザ・スピナテッリによる紗幕が幻想的でじつに美しい。三枝成彰の音楽は変化に富んで叙情性豊かである。牧阿佐美、ドミニク・ウォルシュ、三谷恭三が分担して創った振付は、統一性があり、悠久の時を漂う愛の姿を活き活きと浮き彫りにした。
とりわけ、カナヤ、リヤムに冥界の女王がからむ、終盤のダンスは良かった。テューズリーは哀しみのこもったしかし力強い踊り、田中祐子も情感あふれる踊りだった。冥界の女王に扮した吉岡まな美は独特の存在感を見せた。
2幕4場「白い部屋」
田中祐子、ロバート・テューズリー
 初演のオリジナルキャストが、一段と動きの質を高めていたのには感心した。
しかし、やはりこれだけの壮大な物語をバレエで描くことを、一朝一夕に完成するのはなかなか困難だと思われる。どうしても物語の状況を説明するためだけ のシーンが必要となり、観客との緊張関係が解けてしまうこと、あるいはまた、象徴としての趣旨をどのように観客に伝えるか、などなど気になる点もあった。 さらに改訂を重ねてより高度な舞台を完成してもらいたいと思う。
(8月25日、新国立劇場 オペラ劇場)