ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.09.10]

サシャ・ヴァルツ&ゲスツの『ケルパー(身体)』

サシャ・ヴァルツは今日のドイツを代表するコンテンポラリー・ダンスの女性振付家である。アムステルダムやニューヨークでダンスを学んだ後、1999年 から2004年までベルリンのシャウビューネ劇場のダンス部門の芸術監督を務めた。この時に、サシャは身体に関する3部作を発表したが、『ケルパー』はそ の最初の作品である。
モノクロームの舞台の中央やや下手よりに、黒い大きな壁面が置かれていて、その背後からダンサーが出入りを繰り返す。男性ダンサーも女性ダンサーも肌色のパンツを着けただけだが、黒いスーツその上に着ることもある。
音楽はかすかなノイズや現実音をアレンジしたもの。
舞台上では、ダンサー同士の間で身体の機能や形体への関心が様々な形で、あらゆる組み合わせで表される。ダンサーが自身の身体にまつわる話を語り始める。身体の歴史や機能、弱点、状態などを4人のダンサーが観客に語りかける。
大きな壁面には、中央に長方形の窓があり、数名のダンサーが上から下りてきたり、重なったり横になったり、胎児のようにゆっくり動いたりする。それはまるで、宇宙船の中の無重力状態を見ているようだった。
サシャは、ピロボラスなどのアメリカのモダンダンスの楽天的な身体観やフランスのヌーヴェルダンスのエスプリの追究とも異なって、身体の神秘性あるいは精神の及ばない部分を明らかにしようとしているのではないか。
サシャの舞台は身体性を追究してかえって身体のカオスを提示した。そして身体はまた、ますます日常的な世界の中で神秘的な存在へと変貌しつつあるかのようにも見えてくる。

(7月28日、彩の国さいたま芸術劇場大ホール)