ワールドレポート ~世界のダンス最前線~

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関 口 紘一 text by Mieko Sasaki 
[2007.06.10]

H・アール・カオスの新作『Drop Dead Chaos』


二期会のオペラ『ダフネ』の演出で、十分に実力のほどを示した大島早紀子の新作『Drop Dead Chaos』。
ダンスはもちろん白河直子、そして今回はミュージカルやジャズ・ダンスでカリスマ的な存在の男性ダンサー新上裕也、ヒップホップやストリートなどのフ リースタイル・ダンスで人気を集める群青、さらに木戸、小林、斉木、長内、横山らの5人の女性ダンサーが参加した。
「いつの間にか時間も空間も編集されている私たち」の身体は、「現実自身が仮想現実に陥り、夢の世界との境界が朧気になりつつある」今日、統一性を喪失し てしまった。そうした状況の中で存在そのものを問う、という大島の認識が、じつに美しい舞台を構成した。
 
 大きな三角形のプレートと杭が穿たれているような床の幾何学的な相似形、網の目ように張り巡らされた背景の巨大な壁。舞台の高低を充分に生かした緻密な配置、冴えた美意識が際立つ空間構成である。
宙づりの女性ダンサーが二人、白河のシャープなソロからダンスが始まった。裕也が登場し、白河とからむ。白河の切り裂くようなダンスと裕也の包み込むような動きがコントラストをみせる。
群青の動きも鮮やか。裕也とのデュオ、白河も加わったトリオ、コール・ドとも息の合ったダンスを見せた。
何もかも確証を失った世界、宙空のクモの巣にひっかかているような存在の実感の中でもがくダンサーたち。水の中に浮かんでいるのか、虚空をさすらうような彼らの身体が、また、じつに美しくみえるのは不思議なことである。
天空から幽かな光りが射している中で、コアを踊った白河、裕也、群青、そしてコール・ドの女性ダンサーたちが、見事なバランスを保って、この隙なく構成された作品全体を支えているのである。
 

(5月25日、世田谷パブリックシアター)